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戦争を仕掛けたのは月側で、目的は地球を正常に戻す方法を見つけたから、地球に使いたいと申し出たこと。
そのことに反発した地球側は猛反発して、結果月の裏が表になるほど大戦争が起こった。
地球側も無傷ではなく。
大陸の形が変わるほどの影響を受けながらも、
50年くらいたった時、やっと終わった。
地球側の勝利という形で、そして、姉が巻き込まれた。
月の人間と地球のニンゲンの友好を結ぶために政略結婚を提案してきた。
「そんな、姉さんを生贄にするなんて」
姉さんはこの国の宝のような存在だ。
だから詫びとして、姉を差し出すという意見が多かった。
何一つ機械でない。
ただの人間だ。
機械ではない肉の体は、年齢のせいもあり、細く折れそうなほどだ。
何度も不老不死の手術を受けるように勧めてもアギロは断っている。
「あなたと同じ機械にはなりたいけど、肉の塊のままでいることは嫌だ」
そう言って、断っていた。
月の人間たちは姉が機械になることを良しとしない。
そうして、何も進まないまま姉はどんどん歳をとり今年で70歳。
アンチエイジングで17歳の少女の姿をしているが、確実に中身は歳をとっている。
その70歳の乙女を、あんなカオスで危険な地球にあげるのは非常によくない。
戦争が起こるまで、幾度も調査した地球は生身の人にはキツすぎる。
そんなところに行かせるのか。
一年も持たない。
「姉さん、機械化の手術受けよう。受けさせる」
全身生身じゃなくなればこの結婚もなくなる。
わたしが命をかけてやる。
結局は地球に追放されるかもしれないけど、生身より全然いい。
作戦はこうだ。
私がアギロのふりをして、48時間過ごすだけだ。
48時間はアギロが機械になるまでの時間だ。
私と姉は一緒の部屋に住んでいる。
そしてその部屋はプライバシー保護のため、監視もサーマグラフィックも一切ない。
まず、わたしは部屋のオートマチックオペボックスに入り姉そっくりにする。
オートマチックオペボックスは、特定のプログラムと材料を入れておくことで、自動で手術してくれる道具だ。
見た目は地球でよく見かける蝶の蛹のような形をしている。
できた時は、医者いらずの医者泣かせと言われて大変だったそうだ。
医者は月にはいないけど、地球にはたくさんいたわね。
腕のピンとキリがあったけど。
地球で磨いたハッキングのおかげで、機械や周りには姉がアンチエイジングしているように間違わせる。
金属の肌を、シリコンで覆う。
モデルをやっている機械がよく使う方法で、十分足らずでできる。
アギロとそっくりのかわいい顔と体ができた。
それが終わったあと、『私』は重大な故障が体に起こっていることにして、オートマチックオペボックスに全身の『悪いところ』の機械をプログラムする。
姉を、私の部屋のオートマチックオペボックスに入れておく。
全身にガタが来ているから、私みたいに半分機械になってしまうかもしれない。
その時は一緒に、地球に逃げよう。