99 二通の手紙
二人の男性の内、お兄さんらしき方と『礼をしたい』『いらない』という押し問答を続けていると、二通の手紙とペーパーナイフを持ったルヴィが入室してきた。
「失礼します。リーシャ様、皇帝陛下とフランクス伯爵からお手紙が届いていますよ」
「お二人から?」
お二人とも同時とは珍しいですね。何かあったのでしょうか……? 悪いお話じゃないと良いんですけど……
「以前から思っていたがリーシャ、義姉上はともかく皇帝陛下からの手紙は多すぎないか?」
「言われてみればそうかもしれませんね。急ぎの仕事は伝書鳩が伝えてくれますが、先の話だと陛下から直接命を受けることも多いので」
「なるほど」
それがどうかしたのか問うと、単純に気になっただけらしい。
「これは……」
この場で開封して中身を確認するとお姉様からは嬉しいお知らせが、皇帝陛下からは正直面倒だけど何となく察してはいたことが書かれていました。
「えっと……お姉様がこの夏にご結婚されるそうです。密かに準備を進めていたようでして」
「それはめでたいな。相手は誰だったか」
「ノア侯爵家のラファエル様です。お義兄様は皇城で文官の仕事をしておられるので、見かけたことくらいはあるのではないでしょうか?」
「ああ……ラファエル殿だったのか。私はあまり社交の場に出ないが、言われてみれば一緒にいることも多かった気がする」
やっぱりご存知でしたね。お義兄様は素敵な方ですよ。文官なだけあって博識でいらっしゃいますし、体を動かすことも得意。口数は少ないですが落ち着きがあって良いと思いますし、何よりお姉様のことが大好き! 信頼できる方だから安心してお姉様を任せられる。
「お二人とも仲がよろしいのですよ。わたしも義兄として大好きです」
「珍しいな。君がそこまで信頼している相手というのは」
僅かに目を見張ってそんなことを言われる。だって疑う要素も嫌いになる要素もないじゃないですか。お姉様と相思相愛というところは一番ポイントが高いですし……
「それに、旦那様と違って誠実ですからね?」
「あははっ! リーシャ様それ言っちゃうの……!」
「おい」
「何も隠すことではないからね? これで改心してくださる旦那様ではないと分かってるから言ってるのよ」
嫌味でね。相変わらず旦那様とルヴィはバチバチしてるみたいですね。
旦那様のお名前である『アルヴィン』とルヴィの本名である『メルヴィン』。お二人は性格のみならずお名前までそっくりですね。やっぱり同族嫌悪でしょうか……?
「そんなことよりリーシャ、話の続きは? 居心地悪そうにしている奴らがいるぞ」
「あら、ごめんなさいね。あなた方にも関係するお話ですからもう少しだけお待ちください」
「あ、ああ」
「それで、お姉様の婚姻の儀の招待状が同封されていましたが、もちろん旦那様も参加されますよね? 余程のことがない限りわたしも予定を調整しますが」
お姉様の晴れ舞台なのに不参加だなんて許しませんよ? という気持ちを込めて旦那様をジッと見つめると、分かっているとでも言わんばかりに頷かれた。
日付けと詳細は後で話すということでこの話は終了し、複雑そうな顔で話を聞いていた例の男性二人に向き直った。
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