98 二人の男、再び
◇
「リジー」
「おかえりなさいませ。リーシャ様、旦那様」
「ああ」
「仕事を増やしちゃってごめんね。どんな感じだった?」
フェルリア公爵邸に帰り、そのまま旦那様と屋敷内の一室を訪れると、書類をまとめているリジーの姿があった。ここは診察室で、寝台で横になる小さな男の子と傍に座る先ほどの男性二人がいる。ここは使用されていない部屋だったから、リジーのために旦那様から使用許可を得ていたんだよね。だから医療器具がしっかり揃ってる。
この様子を見るに恐らく診察? 治療? が終わった後なんだろうね。わたしは詳しくないから良く分からないけれど。
「最低限の処置はされていたようで、今のところ命に関わることはなさそうですが、しばらくは様子を見ながら薬を投与した方が良さそうです。火傷してあまり時間が経っていなかったので無事でしたが、もう少し遅ければ後遺症や感染症の恐れがありましたね。火傷の原因は些細なことだったようです。全身火傷、それも広範囲で重症なので完治するまでは安心できませんが……リーシャ様に出会えて運が良かったですね」
「ああ……改めて申し訳なかった。感謝してもしきれない。何か返せるものはないだろうか?」
わたし達が屋敷に帰ってきたのは旦那様と合流して数時間後。あの後、お墓の掃除をして皇族の皆様と少し顔を合わせてから帰ってきました。夜まで帰らないつもりでしたが彼らのこともありますし、お母様が亡くなられて初めて夜以外の時間に帰宅しましたね。
彼らが言うにはわたしと別れた後、急いで弟さんを連れて屋敷を訪れたらしい。そしてさすがは公爵家、身元の知れない相手でもわたしのサインと血判が本物であることを確認した上で、すぐにリジーの元へ案内したのだそう。そしてリジーも丁寧に処置や症状などの説明してくれて、ついさっきようやく処置が終わったばかりなのだと教えてくれた。
リジーはわたしの専属医だけど、筋さえ通せばわたしのお願いは何でも聞いてくれるからね。それに医者として患者を放っておくことはできなかったんだと思う。
「わたしは紹介状を書いただけなので、お礼ならリジーにお願いします」
「私は結構です。私ではなくリーシャ様にどうぞ」
「では代わりに旦那様で」
わたしは本当に何もしていないからお礼なんていらないんだよね。どうしてもと言うなら面倒だから旦那様に押し付けるに限ります。明らかに困惑している彼らを見て旦那様やリジーは呆れの視線を向けてきますが、なぜその視線を向ける相手がわたしなのでしょう? 治療をしたのはリジーなのに、その視線はおかしくないですかね……?
「ど、どうすれば……」
「……リーシャとリジーの気持ちを代弁させてもらうと、『礼などどうでも良いから、さっさと安定した収入を得られるようにしろ。そして同じようなことは繰り返すな』といった感じだと思うぞ。違うか?」
「超能力者ですか?」
「間違ってはいないな」
「たしかに……」
ロードは特殊能力が使えるし……と一人で納得するわたしに、リジーと旦那様はやれやれとでも言わんばかりの顔をしていた。でもその表情はなぜか……いつも以上に、優しかったような気がする。
ご覧頂きありがとうございます。よろしければブックマークや広告下の☆☆☆☆☆で評価して頂けると嬉しいです。




