97 わたしの幸せは
「……体の弱さは治せないな………」
「え?」
「いや、あとどれくらい生きることができる? そのことを知っているのは?」
誤魔化されましたがしっかり聞こえています。『体の弱さは治せない』って、もしかして他のものなら……忘れよう。世の中知らない方が良いこともありますからね。知っても面倒なことにしかならなさそうですし!
「余命は秘密です。知っているのはわたしとリジー、皇帝陛下のみです。亡くなられる直前に分かったことなので、お母様もご存知でしたけどね。ちなみに今のところ治療法などはありません」
お察しの通り、リジーはただの侍女ではない。わたし専属の医者でもある。かなり高い医者としての知識があり、恐らくこの国の医者の中では一番腕の良い医者なんじゃないかな。
わたしの侍女にしておくには勿体ないけれど、本人がわたしの傍にいることを望んでくれている以上無理に離れろとは言えない。
珍しく俯いて何かを考えこんでいる様子の旦那様。契約妻でも思うところはあるのかもしれない。
「この話は忘れてください。誰にも何もできませんからね。長く生きられないことで悩んで立ち止まるくらいなら諦めた方がずっとマシです。幸せは長さじゃないですから」
わたしは短い間でもお母様と過ごせて幸せだった。それにわたしの周りには一緒にいて大変だけど、同じくらい温かくて優しい人がたくさんいる。それだけでは十分ではありません?
「そうか。君がそういうのなら私がとやかく言うことではないな」
「ええ。……わたしはもう少ししたら帰りますが、旦那様はどうなさいます?」
「私も一緒に帰ろう」
「分かりました。それと、先程屋敷に男性二人を招待しました。確認も取らず申し訳ありません」
一応報告しておかないと。わたしは気配に敏感だけどあまり警戒していなかったし、旦那様も気配を消すのがお上手だからいつから尾行されていたのか正確には分からない。最初から尾行されていたのならこのことはご存知でしょうけど……どうなのでしょうか。
「問題ない。余程のことでもない限り君の好きなようにすれば良い。治療だろう?」
「……はい」
最初から尾行していたんですね。なかったはずの気配を急に感じたら手が出てしまうこともあるのでやめてください。旦那様のことなのでしっかり避けそうですが、反応できなければ怪我しますよ。最悪命を落とす可能性もあります。頭の中では何度殺したか分かりませんが、現実でうっかり殺してしまうことがあったら大変ですから、ね? ……お気を付けくださいまし。
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