96 余命僅か
「……そういえばお母様。あのクズ親父と女狐……じゃない、お父様とお継母様にはしっかり復讐しておきました。色々とアウトなことをしておられましたので、喜びいっぱいで……いえ、悲しかったですが牢に送っておきました。お姉様とは和解しましたので、今のところわたしの身の回りは平和です」
危ないあぶない。本音が出てしまうところでした。ギリギリセーフ……ですよね?
そんなことを思っていると、背後から人の気配が近付いてきた。少し前からいるのは分かっていたのですが、なんでここにいるのか分からなくて無視していたのですよ。自分から近付いてきたのなら仕方ないのでお話ししますが。
「ここに何の御用ですか……あなたが来る必要はないと思うのですが」
「……そんなに嫌そうな顔をするな。少しは隠せ。妻の母君に会いに来て何が悪い」
「別に悪いとは言ってないですけど……」
朝食の席で何も言ってなかったので旦那様も来られるとは思わなかった。たしかに旦那様もロードだから許可なくここに来ることはできますけど……
「どうしてわたしを尾行していたのですか? あの距離ではわたしの独り言、全て聞こえていましたよね」
「そうだな。盗み聞きしたのは悪かった。だが聞きたいことがある」
「答えられないこともありますよ」
「『余命僅か』というのはどういうことだ? 私は何も聞いていないが」
ですよね……わたしの独り言を全て聞いていたのならそうなりますよね。触れないでいただけると助かったんですけど、こういうのは見逃してくださらないようです。
「……冷たいことを言うようですが、旦那様には関係ない話だと思います。心配なさらずとも契約の三年間は生きていると思いますので」
「前に言っていた体の弱さが原因か?」
「そうですよ。わたしがここまでの能力を持っていなければ十分に丈夫な体だと言えたはずです。ですがわたしは極端に能力が強いので体が耐えきれなくて。倒れるほど重症な時は少なくても、体調を崩す頻度が高すぎる。だから少しずつ弱っているのです。わたしが長く生きられないと言われているのはそれが理由ですよ」
宣告された歳より長く生きられる可能性もありますけどね。
この契約結婚が終わったら旦那様は赤の他人になる。そうなってしまえば、わたし達は全く別の人生を歩むことになるでしょう。
わたしはこの命が尽きるその時まで自分の目的を追い続けるから、旦那様はわたしより素敵な女性と結婚すれば良い。望んでいたとはいえ、初対面で契約結婚を申し込んでくる相手を完全に信用できるはずがありません。詳しいことを話すつもりはないので、もしわたしの身に何かあっても気にせず、どうぞご自由に生きてくださいな。幸せを願うくらいの情はすでにありますからね。
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