95 ごめんなさい
皇城に行く前に街でお母様にお花を買い、その後は馬車で皇城に向かった。さすがに徒歩で皇城に入るのはどうかと思いますしね。
門の前で馬車から降り、知っている人は極僅かである皇城の一角にある墓地に行くと、当然だけど今までと何一つ変わらない綺麗に整備されたお墓が並んでいた。
「……あら?」
皇族の方々が先に来られたのかな……? すでにお花が供えてあった。
七年前の今日、お母様は《《病気》》で命を落とした。まだ三十になったばかりだった。本当ならお母様は……わたしと違って、もっと長く生きられたでしょうに……
「お久しぶりです、お母様。今年はたくさんご報告したいことがあるのですよ」
エミリア・ロード・フランクス。享年三十。暮石に刻まれた文字を見詰めているといつもお母様の声や顔を思い出す。一番鮮明に覚えているのはお母様が亡くなる直前、わたしを抱きしめて泣いていた姿でしょうか。
わたしの専属医でもあるリジーから告げられたこと────わたしの余命宣告を受けた時、『丈夫な体に生んであげられなくてごめんなさい』と、わたしは泣きながら謝られました。これに関してはわたしもお母様も、なんとなく察してはいたんですけどね。
わたしの体は、恐らく専属医であるリジーですら把握しきれていないくらいに弱い。
「あの時は言いませんでしたけど、謝るのはわたしの方です。最期まで安心させてあげられなくてごめんなさい」
弱くてごめんなさい。わたしが丈夫な体に生まれていればお母様を悲しませることも、泣かせてしまうこともなかったはず。
「それに……これから死ぬまで残り僅かな時間しかありませんが、わたしはきっとお母様に怒られるであろうことをします。これだけは絶対に譲れない。わたしは自分の目的を達成するまでは絶対に死にませんから、そこだけは安心してくださいね」
この体がいつ限界を迎えるかなんて分かりません。宣告された歳よりも長く生きられるかもしれない。明日には動けなくなるかもしれない。元々いつ命を落としてもおかしくない仕事をしているのですから、寿命のことでお母様が気にされる必要はないんですよね。
「お母様。わたし、結婚したんですよ。ちょっとどころではなく面倒な性格をしている方ですし、好きで結婚したわけでもありませんがこれも良い経験ですよね。わたしは残された時間が僅かでも、普通の人と変わらないくらい充実した人生を送ってみせます」
暗い話をするのは好きじゃないから、多少無理矢理にでも話題を逸らすことにする。お母様にも言った通り、わたしは普通の人に負けないくらい充実した人生を送るつもり。だって体が弱いことを理由にたくさんのことを諦めて、それで最期に後悔するだなんて悔しいじゃないですか。わたしは自分の体に負けるつもりはありませんからね!
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