92 命日
◇
「リーシャ様、おはようございます! 今日は何します? 予定がないなら僕と手合わせでも……」
「朝から騒がないでください」
「そうそう。騒ぐなら旦那様の隣でお願いね。目覚ましにもなってちょうど良いと思うわ」
ルヴィことメルヴィンがフェルリア公爵家にやってきて数日。今日も我が家に平穏はございません。
ロードの継承式やそれを祝うための夜会が終わり、社交行事はしばらくはなさそう。『皇族の影』という役割は諜報活動や暗殺、貴族の屋敷に忍び込んで抜き打ち調査など、結構やることが多い。だからロードの任務は変わらずあるけれど、ある程度身の回りが落ち着いたので、少しずつ時間に余裕ができてきた。
最近ではお姉様と文通をしたり訓練の頻度を上げたり、あとはこの屋敷にある大きすぎる書庫でほぼ一日中読書をしていることもあるかな。
自分が知らなかった知識を得られると嬉しいから、学ぶことは意外と好きなんですよね。
「シエル様、旦那様を起こしていただけます? ちょっとお伝えてしておきたいことがありまして。後程シエル様から伝えてくださるのでも構いませんけど」
相変わらず旦那様は朝が弱いらしく、見た目はいつも通りだけど口数が少なすぎることから、半分寝ている状態なのが分かる。寝ているというか……ぼーっとしてる?
「起きているぞ」
「あら、おはようございます。眠いのなら無理してわたしと一緒に朝食を取らなくても良いのですよ?」
朝が弱いのとは別に、忙しくてお疲れなのも知っていますし。それと、眠っていたわけではありませんが完全に目が覚めたのは今ですよね。ご自分ではそのことを分かっていないのでしょうけど。
「問題ない。伝えたいこととはなんだ?」
「今日はわたしのお母様の命日なんですよね。だからこの後皇城に行って、夜までは帰って来ないと思います」
「……そうだったな。分かった」
……え? 旦那様、わたしのお母様の命日を知っていたのかな?
ロードの命日って正確な日付けが公表されないんですよね。公表してしまうとどこの家がロードの血筋なのかバレてしまいますから。基本的に亡くなってから葬儀まで時間を置かれることが多い。正しい日時を知っているのはロードの家族と各家の当主、皇族のみ。稀にロードであれば当主以外の人が知っている場合もあるみたいですが。つまり、身内であってもお父様はお母様の本当の命日を知らない。死亡が確認され次第その事実が徹底的に隠されましたので。
お義父様から聞いたのかもしれないね。旦那様が葬儀に出席していたのならば、関係者に聞いた可能性もある。わたしはあの時精神が壊れかけていたから、葬儀があった日の記憶はあまりないんです。だからもし旦那様があの場にいたとしてもわたしは覚えていない。
ご覧頂きありがとうございます。よろしければブックマークや広告下の☆☆☆☆☆で評価して頂けると嬉しいです。




