91 いい加減にしてください?
「でもリーシャ様、本当に良いの? 僕が護衛になっても仕事はほとんどないと思いますけど」
「大丈夫よ。公爵夫人として護衛がいないのはどうかと思うし、かと言って見ず知らずの人間を傍に置きたくないからね。わたしの話し相手にさえなってくれたら後は好きにしてて良いよ?」
「うわぁ、腕が鈍りそうな仕事」
雇われることを決めたのは自分でしょうが。楽をしたい人からすると話し相手になるだけの仕事なんて天職でしょう。
言葉の割に嫌そうではない彼に『腕が鈍ることを気にするのなら時々相手をしてあげる』と言うと目を輝かせた。やる気で満ち溢れたようで何よりだわ。
「話は終わったか?」
「あ、はい。すみません」
「改めまして、メルヴィンです。リーシャ様とはそれはそれは古い仲でして、リーシャ様について知りたいことがあったら教えてあげなくもないですよ」
「ほう……」
ちょっと……なんで早速バチバチしてるんですか、お二人とも! 旦那様も面白がらないで良いですから! それと、何度か会っていますが古い仲というほどではありません。
「あのー、喧嘩は他所でやってくださいね。絶対にわたしを巻き込まないでくださいよ」
この二人、容姿は整っているのに性格は残念という共通点があるから、同時に敵に回ることになったら絶対にめんどくさいですよね? 想像もしたくない。お二人の仲が早速悪くなりそうなのは同族嫌悪ってやつかな。ねぇ、リジーにシエル様。どう思います?
視線を向けると、二人揃って自分には関係ないとでも言わんばかりの顔をしていた。使い物にならなさそうだったので諦めてお茶菓子を堪能することにする。さすがは公爵家、程良い甘さでいくらでも食べられそうなくらい美味しいんですよねぇ……
「リーシャ様、甘いものばかり食べると太りますよ」
「リジーまで失礼なことを言わないでくれる?」
ちょっとくらい良いじゃないですか。どうせ任務で動き回ったら食べた分は消費されるよ。基本的に疲れないけど運動量は多いからね。
実家にいた時はお茶菓子を堪能する余裕なんてなかった。そう考えれば目の前の睨み合いくらいなんてことは……
「君はあまり外に出ないのだから控えた方が賢明だと思うぞ」
「そうそう。おデブなリーシャ様も可愛いと思いますけどね」
「……お二人とも、ここが誰の部屋か分かっていまして? 余計なことを言うのなら追い出しますよ」
なんで最後はわたしがこんな目に合うのかな。面白がって言ってくる旦那様に、至って真面目そうなルヴィ。どちらもムカつく。満面の笑みで『出口はあちらです』と扉を指して差し上げた。
女性に体型の話はタブーでしてよ。それを分かっていて助言してくださる、とってもお優しいお二方に教育してさしあげたい。ついでに俯いて肩を震わせているシエル様にも。
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