84 離婚
「さて、戦いましょうか。旦那様は何人まで相手にできますか?」
「その道のプロが相手なら一人が限界だろうな。私はこのタイプに慣れていない」
「分かりました。ではわたしはこちらの三人のお相手をしますので、旦那様はそちらのお方をお願いします。……わたしと戦うのだから覚悟はできているよね? まあ戦うまでもないでしょうけ……どっ!」
銃はうるさいからあまり得意じゃない。行動がバレやすいし。わたしが話しているのを聞きもせず、一方的に撃ってくるプロらしきお三方の武器は一旦回収させてもらった。そのまま目の前で解体して見せる。
どれだけ撃っても銃弾が当たらないからか少し焦りが見えた。焦っているところを狙えばプロでも素人とそう変わらない。少なくともわたしにとっては。
解体した銃をその場に捨て、短剣を構える。彼らが他の武器を取り出す前に背後に回り、そのまま一人の心臓を貫いた。すぐに引き抜き、一度蹴りを交わしてから二人目も刺し殺す。旦那様もルイスさんを順調に追い詰めている。三人目が旦那様に狙いを定めるように視線を向けたので、動き出す前に彼の心臓もいただいた。
返り血で濡れた頬を拭い、短剣も付着した血も払ってから懐に収める。そして倒れている彼らに微笑んでみせた。
「飛び道具はわたしに当たらないと思った方が身のためですよ? こちらには特殊能力があるということをお忘れなく。あ、もう死んでるから手遅れですね」
「あんたっ、思った以上に化け物だな……! そいつらは騎士団長級の騎士が束になっても……勝てるくらいには……うおっ! 実力があるぞ?」
そんなに強かったんですね、彼ら。でも武器を失ったら手も足も出ないみたいでしたよ? 良く今まで生きて来られましたね。彼らが弱いのか私が強すぎるのか……恐らく後者よりの両方でしょうね。
「お前こそ余裕だな? リーシャ、こいつはどうすれば良い?」
どうしましょうか。取りあえず面倒だったので暗殺者の方は全員殺しましたけど……彼がどこかの組織に所属しているとして、何となくルイスさんは幹部に近いと思うんですよね。旦那様が上手く急所のギリギリを攻めてくださっているけど、どうするべきかな。
「利用価値はあるかな……では旦那様、彼は生け捕りでお願いします。意識は刈り取っておいてください」
「分かった」
「……ゔ、あっ!」
「……何というか、終わるのが早いな。話していた時間の割に」
「長引くよりは良いじゃないですか。戦闘は早く終わらせた方が良いに決まっています。あっさり手助けしてくださいましたけど、わたしの行動が分かっていたんですか?」
「いや? ただ、君のことだから私を巻き込んでくるだろうとは思っていた。明らかに強そうな人物を三人同時に相手にして、あれほど簡単に殺せるのか」
「ご不快でしたらすみません。わたしと結婚してしまった以上、今のように殺し合いを見たりそれに参加させられることも少なくないと思います。これに関しては事前に伝えておくべきでした。……そうですね、ご希望でしたら今なら離婚しますよ」
利害の一致で結婚したとはいえ、わたしが迷惑をかけることの方が断然多くなると思う。さっきは利用し合えば良いなんて思っていたけど、わたしが一方的に旦那様を利用することになってしまいそう。さすがにそれは申し訳ないかな。ルイスさんのようにどこからかわたしの正体を調べ上げてくる連中だっているでしょう。一体何年調べればわたしの情報を手に入れることができるのか謎ですが。
「目の前で殺し合いなんて見たくないですよね。ここで離婚しないなら三年間耐えていただかなければなりませんよ。どうなさいます?」
わたしだってそう何度も離婚の提案をするつもりはない。だから今を逃せば次は三年後になると思う。その時は提案じゃなくて、絶対に離婚しますけど。
そんなことを思いながら、後始末をリジー達に任せてわたし達は皇城の外に待機している馬車へ戻った。わたしがルイスさん達と殺り合っている間に、いつの間にか夜会が終わっていたらしい。
今日は朝から雨が降っていたがいつの間にか土砂降りになっていたらしく、地面が緩くなっていたので旦那様がエスコートしてくださっている。相変わらず紳士ですね。わたしの言葉には少し悩んでおられるようですが……
「……たしかに、殺し合いは見ていて気持ちの良いものではないな」
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