78 絶対に間違えることはできない
「リサちゃん、良いの?」
「何がですか?」
「分かっているでしょう。あなたと話したい方が大勢いるみたいよ?」
うーん……分かりませんね! 何も見えません! 全員とまでは言いませんけど、今まで散々わたしのことを嘲笑してきた人達ですよ? 少しマシになって公爵夫人という肩書を手に入れたからと近付いて来るような人、わたしは関わりたくありません。公爵夫人としてそうはいかない場面も今後あるでしょうけど、契約でも必要最低限で良いと決まっていますので今は結構です。
貴族……というより人間は都合の良い生き物だと分かっていますよ。わたしだってそうですし。でもあからさまに手のひらを返されて嬉しいと思いますか? わたしは別にちやほやされたいわけじゃないんですよ。
そんな人達と関わったところで碌なことになりませんから、少なくともわたしからレタお姉様の元を離れることはありません。皇女殿下と公爵夫人が話しているところに割り込んでくる勇気のある方のみ、お相手して差し上げますわ。
「わたしには何も見えませんし、何も聞こえません。自分のやるべきことで精一杯なのでこちらから動くことは絶対にしませんよ」
「そう。公爵のところには戻らなくて良いのかしら? 先ほどから痛いくらいに見詰められているのだけど」
「それはレタお姉様が素敵だからじゃないですか?」
旦那様の女性のタイプはレタお姉様なんじゃない? それか、わたしが粗相をする可能性でも考えているのか。それ以外にこっちを見る理由はないと思う。どちらかと言うと後者な気がするのはわたしの気のせいでしょうか?
「本気でそう思っているのが伝わってくるから感心するわ。……どう考えても、リサちゃんを独占している私に対しての嫉妬の眼差しでしょうに……」
「え?」
「何でもないわ」
「そうですか?」
何だか聞き捨てならない言葉が聞こえたと思ったんだけど……聞き間違いでしょう。
「あっ……レタお姉様、わたしはこれで失礼致します」
「怪我しないでね」
「言われるまでもなく」
絶対とは言えませんけど、と心の中で付け加えつつ警戒していた人物の傍まで行く。急に気配が変わったから移動したけど、あの人が動き出すギリギリまでは少し距離を取って待っていましょう。
気配からしてその道のプロではないと思う。だけど武器の扱いには慣れていそうですし、この手のことをした経験は他にもあるのではないでしょうか。立ち居振る舞いも綺麗だし、身分を剥奪された元貴族か裕福な平民か……
最優先事項は皇族の身の安全を確保すること、次に周囲の方々の安全確保。そしてあの人の正体や目的などを探らなければならない。
皇族の身が最優先であることに変わりはないけど、国民は全員わたしの庇護対象。この判断が正しいかなんてわたしにも分からないけど、やるべきことは決まってるから臨機応変に進めよう。順番を間違えたら最悪の場合皇族の安全を確保することができなくなる。良く見極めないと。
「────こんばんは、メルティア子爵」
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