69 大切
「君が大切じゃないと言ったことはないぞ?」
「大切だと言われたこともありませんけどね。わたしだから何とも思いませんけど、他の女性だったら勘違いを生みそうなので気を付けた方が良いですよ? 旦那様を慕っている女性なんて山ほどいるのですから」
気を付けないといつか大変なことになりそう。眉目秀麗で文武両道。仕事人間で嫌味と皮肉が恋人だけど案外紳士的。中身が腹黒であってもそんな完璧な人がモテないわけがない。
「……私だって誰にでも同じように接するわけではない。君は一応妻だからな。君も大切にしてくれて構わないぞ」
「…………」
そうそう、こういうところ。旦那様の趣味が他人を玩具扱いすることなのは分かっていますから、それをわたしにしなくて良いです。こういうところが好感度を下げてるんですよ。そのいたずらっぽい笑み、他の女性に見せてください。きっと喜びます。旦那様の取り合いが始まると思います。
そうしたらわたしは離れたところから笑ってあげますよ。完全に他人事でね。
「旦那様に恋人がいないのが不思議ですよね。わたしからすると旦那様の好感度は地に落ちていますけど、他の女性には大人気でしょうに。愛人はいないんですか?」
「君はなぜそんなに不倫を推奨する?」
「え? だって三年後には離婚するんですよ? 次の結婚相手は早い内に決めておいた方が良いと思うんですけど」
旦那様はわたしと七歳差で現在二十四歳。三年後には二十七歳。まだまだお若いですが、早めに次のお相手を決めた方が良いんじゃないですかね。跡継ぎもいるでしょうし……
「それは君も同じだろう。私は愛人を持つことを許可していないがどうするつもりだ?」
「わたしは三年後でも二十歳です。ギリギリ大丈夫だと思いますよ。今のところは結婚しなくても良いと思ってますし」
「以前も言ったが結婚しないのなら跡継ぎはどうする気だ、ユリウス公爵?」
「それは最終手段ではありますが一応考えてますよ。問題ありません」
少々行き遅れになるかもしれませんが、今のわたしは前よりまともな容姿ですから嫁ぎ相手は決まるのでは? まあなるようにしかならないので、細かいことを考えても仕方ないですよね。考えるのが面倒なだけですが!
「そうか。それで、君の護衛として雇うことが決まっているのはどんな人物なんだ?」
「一言で言うなら変わってますね。でも皇族の護衛に余裕でなれるくらいには綺麗な顔立ちをしていて、戦闘面での実力もあります。欠点らしい欠点がない方です」
本当に。あるとすれば変わった人ってくらい。でもそれは欠点ではないと思う。個性ですよ、個性。
話し相手としては楽しい人だった。ただ他人を玩具扱いするところは旦那様にそっくりだし、面白いもの好きな面は厄介でもあるでしょうね。
高い身分の人に仕えるなら相応の容姿も必要になる。だけど彼は本当にびっくりするくらい綺麗な顔立ちをしているから、そこに関しては少しの心配もいらない。
「わたしはルヴィと呼んでいます。本名は違うんですけど」
「ルヴィ……まさか、その男をけしかけた奴か?」
「はい。良くある名前なので別の人物だと思いたいところですけどね」
「碌な奴ではないだろう」
「そういう人です。慣れてください」
ある意味旦那様と気が合いそうだよね。同族嫌悪のような感じでピリピリする可能性もありますけど、それはそれでわたしが楽しめそうだから良いですよ?
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