66 プレゼント
「リーシャ、君は少々自分の侍女を振り回し過ぎではないか?」
「旦那様には言われたくないですね」
隣でずっと黙って座っていたシエル様が大きく頷いてますよ? 従者を振り回しているのは旦那様だって同じじゃないですか。
公爵家の馬車は大きいから四、五人くらいなら余裕で乗ることが出来る。主人と使用人は別れて馬車に乗ることも多いけど、わたしは一緒の方が暇しないし旦那様も気にしないみたいだから自然と一緒に移動していた。
「同じ言葉を返そう」
「…………」
結構ですけど。わたしが旦那様に言うってことは同じように返されるんだろうなとは思ってましたけど、黒い笑顔のおまけはいらないです! お得どころか大損ですので。
あなたを慕っているご令嬢やご夫人なら、その黒い笑顔でも喜ばれるんじゃないですか? ……って、直接本人に言えたら良いんですけど、応酬が怖いのでやめておきます。
「とにかく、リーシャかリジー、どちらでも良いから熱が出ている時は一言私に報告するように」
「……分かりました。ではわたしからも一つ、旦那様にお願いしてもよろしいでしょうか?」
「言ってみろ」
「わたしをからかうのと、嫌味や皮肉をプレゼントしてくるのはやめてほしいんですよね。あと腹黒さが滲み出ている黒い笑み。後者の方が頻度は高いでしょうか……? どちらにしても、いつか恨みの感情が溜まった時に寝込みを襲ってしまいそうで」
ふふ、とにっこり笑って言ってみる。これくらいならギリギリセーフなのでは……?
「それは無理な相談だな。それはそうと奥様? ちょうど新しいプレゼントを用意していたところだ。シエル」
セーフではなかった! しっかりドス黒い笑顔をいただいてしまったのに、新しいプレゼントってなに!? 嫌な予感しかしないのでいらないですよ。結構です。心の底から遠慮致しますわ。
「はい。リーシャ様には使用人の入れ替えを行っていただきます。数人の使用人が解雇されたことはご存知だと思いますので、次にフェルリア公爵家で働く使用人の選別をしてください」
「質問ですが、優秀な人に心当たりがあるとおっしゃっていませんでしたか? 旦那様」
「ああ。だが君への態度が悪いという理由で解雇になったのだから、君が望む者を雇いたいと思ってな。公爵夫人としての最初の仕事だと考えてほしい。全責任は君に渡すのでできる限り君に選んでもらいたい。どうしても相応しい人間が思い当たらないようならそれで良い。私が考えていた人物を雇おう。だが伯爵家と公爵家では雇用形態も違う。新たなことに挑戦することも大事だろう?」
思ったより良心的なプレゼントだった。たしかに最初の契約で公爵夫人に見合った振る舞いをすると決めてある。最低限しなければならない仕事もあるだろうと思っていた。もちろん、ロード以外の仕事なんてしなくて良いのなら絶対にしないんだけど。いや、しなければならなくてもできるだけサボりた……遠慮したいけど。
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