63 アルヴィン・ロード・フェルリア
「──はい、武器を捨てて両手を頭の後ろに回してくださーい」
母上と話していた言葉が不自然に止まり、一瞬私の方を睨んだかと思えばいつの間にか玉座の方へと移動していた。玉座に座る皇帝陛下に向けて刃を取り出した者の背後に回り、首元に短剣を触れさせたのはほんの一瞬前まで私の隣に立っていたリーシャだ。
私ですらたった今侵入者に気が付いたというのに、この時点ですでに背後に回っているリーシャは一体いつ気が付いた?
「離せっ!」
「それで離す馬鹿がいると思います? 今すぐ武器を捨てないと殺すよ」
「チッ……これで良いだろ!」
「陛下、お怪我は?」
「ない。今までに命じた任務の関係者か?」
「どうでしょう……家族とかですかね?」
笑顔だが目は笑っていないな。今日は継承式でずっと瞳の色が変わっていたため、能力を使ったのかも分からない。先ほどの父上との会話からして、間違いなく戦闘系の役割を持っているのだろう。
そうでなければあり得ない速度での移動も、どこから取り出したのか分からない武器や殺すことに躊躇していない様子にも説明がつかない。
役割に関係なく、ある程度は戦えるように鍛えてあるロードがリーシャ一人を除いて誰一人動いていないんだ。相手も相当な手練れなのだろう。そんな人物を一瞬にして制圧している。
この全員が騒ぎに気付いた状況で動く者がいないのは、逆にリーシャの邪魔になる可能性を考慮しているのだろうな。
「手馴れているようにも見えましたけど。ねぇ、あなたは誰かに雇われているの?」
「言うはずがないだろ!」
「それはそうでしょうね。んー……」
「何か分かるか?」
「そうですね……大勢が集まっている中、陛下に刃を向けている時点でスパイではないでしょうし、気配からして暗殺者かと。話し方に若干訛りがあるのでアルランタの辺境出身かな……アルランタ王国の暗殺者といえば、たしか暗殺者ギルドがありましたよね……あ、ルヴィって名前の人知ってる?」
「!?」
ルヴィ……? 今の反応は間違いなく知っているな。良くある名前な上に愛称として使われることもある。特定は難しい、か?
アルランタ王国の暗殺者ギルドについては私も聞いたことがある。意外にもトップの暗殺者は王家に仕えている者が多いため王族が狙われることはなく、実力者が集まったほぼ公式の組織だ。この国のロードと似た部分もあるかもしれない。
「知ってそうだね。その人は黒に緑メッシュの特徴的な髪色で、エメラルドの瞳を持ってる?」
「…………」
「……申し訳ありません、陛下。犯人はわたしの知人だと思います。そして本当の狙いは陛下じゃなくてわたしだと思います」
「なぜそう思う?」
「最近色々あったんですよ。遊び半分で試されているのでしょうね」
遊び半分で人を殺そうとする馬鹿がいるか? リーシャが狙いなら尚更。
契約時にお互いの本業を探らない、という項目を作らなければ良かったか? こんなことが続くようならリーシャもいつ命を落とすか分からない。私でも守り切れないかもしれない。
「でも、彼はわたしの実力を知っています。暗殺者を向けてくるということは、この人は用済みなのでしょう。どうしますか? 陛下が始末しろとおっしゃるのならそうしますけど」
「そうだな……いや、私を狙ったものでないなら好きにすれば良い。始末するなり逃がすなり」
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