55 大切な物の隠し場所
「……やっぱり、あるとすればお母様が生前使っておられたお部屋かな?」
「リーシャ様の眼では視えないのですか?」
「うん。お母様のお部屋ってあまり入ったことがないのよね。隠し部屋があったりする?」
お母様の部屋にはわたし以外は入れないようになってる。だからたまに掃除のために入っていたけれど、ちゃんと部屋の中を見たことはなかった。何か探し物があったわけでもなく、ただ掃除のために入っていたのだから当たり前かもしれないけど。
「少なくともわたしの眼には何も映らないのよね。……あっ」
「どうかなさいました?」
「……そういえば、わたしは短剣を見たことがなかったわ。柄の部分に宝石が埋め込まれていること以外は何も知らない。家宝の短剣が普通の見た目をしているかしら?」
見た目に関しては分からないけど、案外身近にあるか、あるいは無意識に探さないようにしていた場所にあるか。そんな可能性も捨てきれないよね? それなら……
「リジーだったら自分の大切な物を隠す時、どんな場所に隠す?」
「そうですね……できる限り常に自分の視界に入るところ、でしょうか」
「そうね。お母様は病気だったから任務の時以外はほとんどベッドにいたわ。他の誰かから見えることはないけれど、お母様だけは常に視界に入れておくことができる。その場所がどこか分かる?」
「……まさか」
お母様が生前使っていたベッドに横になってみる。すると天蓋のフレームに小さな穴が開いた箇所があり、薄っすら光って見えた。鍵穴のようになっていたのでヘアピンで開けてみると、小さな引き出しの中に短剣が隠されていた。恐らく宝石に光が反射して光っているように見えたんだろうね。
「わざわざこんなところに引き出しを作るなんて、発想がすごいわね」
「もしかしてそれが……?」
「ええ、本物の宝石だし間違いないでしょう。絶対に複製することはできない石だから、これ以外はあり得ないわね」
この場所なら中々見つからないし、見つかっても簡単には取り出せないでしょう。ほぼ常に見張っていられるしね。
「案外あっさり見つかりましたね」
「ええ。まあ無事に見つけられたのだから良かったわ。帰りましょう」
リジーの言う通り本当にあっさり見つかって拍子抜けしたけど、継承式には間に合ったから安心した。
明日の継承式、少しだけ楽しみなんだよね。わたしと旦那様の血筋以外にどこの家がロードなのか気になる。同じロードにでさえ悟らせないくらい、どの家も巧妙に隠しているからね。基本的にはたとえ家族であっても、他のロードについて話すことはしない。絶対的な信頼のおける相手には伝える人もいるけれど、その話した相手が裏切ったら全責任は当主に行くから、普通は誰にも話さない。わたしはリジーにだけ伝えておくつもりだけどね?
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