54 お久しぶりではない対面
「リーシャ様は馬車で移動するということをそろそろ覚えた方が良いと思います」
「普通に走った方が早いじゃない。ちゃんと馬車を使うことだってあるのだから大丈夫よ。今は急がないといけないから」
頭が痛いとでも言わんばかりに額を抑えて『そういうことじゃないんですよね』と言うリジーに笑いかけると、なぜか深い深い溜め息を吐かれた。
走っているところを見られるのは淑女としてどうかと思いますし、屋敷から少し離れたところからは歩いているのだから別に良いでしょう。今は歩いているんですから、馬車での移動ではなくても問題ありません。
「あの、お客様。勝手に入られては困ります!」
「あら? 分からない? リーシャだけど」
「……えっ? お、お嬢様!?」
「そうよ。だから入らせてもらうわ」
屋敷に到着し、足を踏み入れると使用人に声をかけられた。わたし、確かに変わったとは思うけどそんなに驚くほどかな? 特にあなたは以前からいた使用人じゃないの。
「ソフィアお嬢様……ではなく、ご当主様をお呼びしますので客室で、」
「結構よ。すぐに帰るから。お姉様はどちらに?」
「……執務室におられるはずです」
「そう、ありがとう。リジー行くわよ」
「はい」
こんなところで無駄に話している時間はない、と簡潔に会話を終わらせる。いまだに困惑している様子の使用人を無視してわたしが使っていた執務室に行くと、絶賛書類決裁中のお姉様がいた。もちろんノックはしたんだけど、返事がなかったので無断で入りました。お姉様はわたしに気付いていないようで、黙って見ていると物凄いスピードで仕事を片付けていた。
「こんにちは、お姉様」
「ええ、こんにち……は……?」
「あら、やっと気付きました? こう言ってはなんですけど、さすがお姉様ですね。まだ当主になって数日ですのに」
さっきも言ったけど、書類を片付けるスピードがすごい。無意識なのか分からないけど、今話している間にも手は動いてますし。
「驚いたわ。突然どうしたの?」
「明日、わたしのロードの継承式があるんです。ですがその時に必要な物が見つからなくて。少し屋敷内を調べさせていただいてもよろしいですか?」
「そういうことなら好きにして良いわよ」
「ありがとうございます」
荒らすつもりはありませんからご心配なく。そんな意味も込めてお礼を言うとそれが伝わったのか、お姉様は苦笑して肩を竦めた。期待してないとでも言いたげですが、わたしってもしかして信用ないんですか? ……旦那様と同じかもしれないと思うと非常に不愉快ですので、頑張ってお姉様の信頼を得ますね。
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