50 夜会があるなんて聞いてません
「ですが、わたしが誰と仲良くしていようと旦那様には関係ないでしょう? 友人関係や異性との交流を気にする間柄ではありませんし」
「そうだな。お互いのことを深く探らない契約だ。好きにすればいい」
「旦那様に言われずともそのつもりです」
うん、やっぱり楽だわ。嫌味と皮肉が恋人の旦那様だとちょっとどころではなく、たまにすごーく怒りの感情が湧いてきますけど、それも含めての契約だと思うことにします。
「それよりリーシャ、君に確認しておきたいことがある」
「何ですか?」
「数日後には君の継承式があるが、その後のことは考えているのか? まさか皇帝陛下主催の夜会を忘れたわけではないだろう?」
「え……」
え? な、何ですか、皇帝陛下主催の夜会って。わたし知らないんですけど……?
「リジー、わたし聞いてないんだけど」
「私は招待状が届いているとお伝えしましたよ。ただ、その時のリーシャ様は任務前だったので聞き流しておられたのでは? 私はちゃんと話を聞いているのか確認しましたけど」
あー……それはわたしが悪いね。でも聞いてはいたと思う。任務の内容は、任務が終わればまたその情報が必要になるまで心の奥底に封印するので、直前の記憶も消えてしまうことが多い。思い返してみれば、この前の伯爵の時……任務前に言われたような気がする。
「忘れていただけだと思うわ。夜会っていつなの?」
「継承式の翌日にはロードの代替わりについて公表されます。たしかその数日後ですね。詳しいことは招待状をご覧ください」
「分かったわ、ありがとう。……ということで旦那様。何も考えていませんでしたし、準備もできておりません。ドレスは実家から持ってきた物があるのでそれを着ます。今から仕立てても間に合いませんから」
お母様の形見なんだよね。お母様がわたしくらいの年齢の時に着ていたらしいんだけど、流行物ではないから少しリメイクすればもう一度くらい余裕で着れると思う。
「ここは公爵家だ。今からでも間に合うぞ」
「いえ、大丈夫です。ちゃんと綺麗なドレスなので今回は持っている物を着ますよ。次は新しく仕立てますね」
「大事な物なのか?」
「はい。お母様の形見なので、一度くらいちゃんと着てみたいと思いまして」
どうして大事な物だと分かったのでしょうね。そんなこと聞いても意味ないですし、答えてくださる気もしませんので黙っておきますけど。
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