43 珍しい旦那様の姿
「……リジー」
「はい」
「少しだけで良いから……一人にして」
「かしこまりました」
リジーが部屋から出て行くのを確認し、ドレスのままではあるけど着替える気分にはなれずそのままベッドに倒れ込む。考えれば考えるほど、涙が込み上げてきそうになる。
わたしの言葉はお姉様に響かなかった。要するに、お姉様は本心を話せるほどわたしを信じていなかったのでしょうね……というより、本心を話すほどの相手ではないのかも。
ずっと好きだった。いつかまたお姉様と笑い合える日が来たら良いのにと、ずっと思い続けてきた。そんな日が来ることを夢見ては諦めて……
悔しいし悲しい。寂しい。焦り過ぎたのかもしれないね。まだあの家を出て一週間と少ししか経っていないのに、そんなに早く心を開いてくれるはずがない。
「お母様ならなんて言うかな……考えがまとまらないなら訓練でもしたら、とか……?」
それはないか。お母様は別に脳筋というわけではないし。だけど体を動かせばすっきりはするかもしれない。
「……ノックくらいしていただけません?」
「リジーに君の話を聞いてあげてほしいと言われて来たんだが、ノックしても返事はないし、気配もなかったからな」
「すみません、気付きませんでした」
リジー……また旦那様に報告したのね。わたしと旦那様、どっちがあなたの主人か分からなくなるんですけど。旦那様が良いように使われているのか、それともリジーが良いように使われているのか、あるいはその両方か……
「何かあったのか?」
ベッドから起き上がって私室の方に移動する。寝室の前で立っていた旦那様にもわたしの正面に座るよう促した。
「いえ、聞いていただくほどの話ではないですよ」
「それならリジーは私に頼んできたりしない。無理に話せとは言わないが、人に話した方が楽になることもある」
「……お姉様と喧嘩をしたので落ち込んでいるだけです。別にお姉様が悪いわけではないんですよ? わたしが勝手に寂しくなっただけですから」
喧嘩ですらなかったかもしれませんが、と軽い感じで言ったのに旦那様は珍しく真面目に話を聞いてくださる。こういう時こそ、いつものようにしていてほしいんだけどね。調子が狂うから。
「平気なふりをする必要はないと思うぞ。そんな顔をして苦しむくらいなら、涙が出なくなるまで泣いた方が良いんじゃないか?」
「……?」
「どうした?」
「いえ、どこかで聞いたことがあるような言葉だと思いまして。泣いたりしませんよ。わたし、泣いたら少し幼く見えるって言われるんです。恥ずかしいじゃないですか」
それに、泣いてしまうとどうしても冷静ではいられなくなるからね。わたしは常に冷静でいなければならない。
でも、何となく安心する言葉だった。どこに安心する要素があるのか分からないけど、聞き覚えがあるからかな? ただの気のせいかもしれないけど……
ご覧頂きありがとうございます。よろしければブックマークや広告下の☆☆☆☆☆で評価して頂けると嬉しいです。




