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16 待っておりますので

 ◇


 旦那様が任務に行かれて、今日で三日目になる。わたしは今、ユリウス公爵邸に向かう馬車の中にいるのですが、まだ旦那様の帰宅連絡は届いていません。花祭りは明日なのでそれまでに帰ってきてくだされば問題ありませんが、やはり四日かかる想定だった任務を三日以内に終わらせるのは厳しいのでしょうね。


「とりあえず、屋敷に着いたらこの短剣を隠さなければならないわね……」


 わたしとお母様の瞳の色をした宝石が埋め込まれている我が家の家宝を、手のひらの上でジッと見つめる。

 何度見ても、本当に美しい色だなと思います。これがわたしだけの色ならばそんな風には思わなかったのでしょうけど、お母様と同じというだけで一気に特別感が出るんですよね。不思議なものです。


 この短剣はお母様と同じ、寝台のフレーム部分に隠しておこうと思う。あのような場所を見る人など普通はいないし、そもそもわたしの寝室に入ることのできる人間など極わずか。あそこが最も安全と言えるでしょうね。


「あら? このサンドイッチ……」


 昼食にと料理人に作ってもらったのだが、いつもと味が違う気がする。ソースの味を変えてみたのかな? でも甘酸っぱくて美味しい。夏らしい爽やかな味わいですね。旦那様はあまり好まれない気がしますけど、わたしは気に入りました。また作ってもらおう。


「わたしの屋敷まで、あとどれくらいですか?」

「何も問題が起きなければ、三十分ほどで到着すると思いますよ」

「意外と早いですね。ありがとうございます」


 今日は日が暮れるまでリジー達の訓練に付き合い、夜はユリウスでしかできない仕事を進める予定。だけど最優先でやっておきたいことがあって、それは旦那様のお出迎えの準備。約束通り、今日中に帰ってきてくださったなら相当お疲れでしょう。だから湯浴みでも睡眠でも食事でも、何でも望むままに休ませて差し上げたい。明日は一日中皇都を歩き回る予定ですし、疲労回復は絶対必要だと思います。


 ────ねぇ、旦那様。わたし、誰かが任務に行く姿を直接見送るのは母以外で初めてだったんですよ。旦那様の役割について、わたしは何も知りません。序列二位の血筋ですし、もしかするとわたしと変わらないくらい危険な役割をお持ちかもしれませんね。それが分かっているからこそ、これでも少しは心配しているんです。怪我をしないで。少しでも休んで。急かしたわたしが言うことでもありませんが……絶対に、()()()帰ってきてくださいませ。もう二度と、あのような絶望は見たくありません。

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