15 誰が暮らす領地であるのか
皇帝陛下との謁見を終えて屋敷に戻れば、わたしを待っているのはユリウス公爵としての仕事。お姉様の結婚後からは元フランクスの領地もユリウスが管理することになったため、再び領地運営をしていかなければならない。フランクスの屋敷を出た時、もう二度とあの領地を管理する日は来ないだろうと思っていました。たったの数ヶ月でその予想は裏切られましたけど、領地と領民のことは大切に思っていたので不満はありません。
執務机の上に積み重なる大量の書類。わたしはロードとして働いているおかげで、一生遊んで暮らしても一人では使いきれないだけのお給料をもらっている。現時点でわたしの貯金は国庫を軽く上回るくらいになるかな。
ユリウス領はお姉様が管理してくださっていた数ヶ月でだいぶマシになったとはいえ、まだまだ改善すべきところが山ほどある。普通に働いてもらったお給料ではまともな領地にするまで一体何年かかることか。だけどわたしは貯金があるので、自分の私財から領地運営のための資金に回そうと思っている。
「リジー……は、いないんだった。常に行動を共にしていると、こういう時に困りますね……」
部屋の本棚から必要な資料を取り出し、確認しながら書類を片付けていく。わたしもユリウスに行って訓練の様子を見たり、旦那様と花祭りに行く予定もあるのであまり時間がないんですよね。何とか今日と明日で終わらせるしかない。どうせ特別な理由でもない限り屋敷を離れられないのだから、こういう時に進めておくのが吉でしょう。
「土木工事に必要な資金提供のお願い……」
申請されている場所を地図で確認すれば、近くに建物が多かった。反対側に渡るにはかなり遠回りをしなければならない。これは承認しない理由がない。
申請されているのは橋一本だけど、この長さの川なら三本くらいはあった方が便利でしょう。どれも馬車が通れる広さの物が望ましい。
これらのことを踏まえた上で少し多めに予算を設定し、申請を通すことにした。ユリウスの領民は元々わたしと親しくしていた方がほとんどですから、報告や申請をしっかりしてくださるんですよね。上の者との信頼関係が築けていると言いますか。そしてユリウス領や領民にとって利益となるのであれば、わたしが高確率で申請を通すことも知っている。
領地で暮らしているのは彼らなのだから、他の誰でもなく彼らが暮らしやすいと思う街作りをしなければならない。そのための協力なら惜しむつもりはないですよ。領地が発展すればわたしにも利がありますしね。
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