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5 『メルヴィン』と『ルヴィ』

「僕は素性を隠したただの『メルヴィン』としてリーシャ様にお仕えしておりましたが……わたくしはアルランタの第一王女でして」

「……っ、お目に掛かれて光栄です。まさか王女殿下だったとは……」

「いつも通りで構いませんわ。わたくし、王女とは言いましたけれどすでに王位継承権を放棄して自由の身ですもの。王族を名乗ることはできますがそれに見合った権力や地位は持ち合わせておりません」


 肩を竦めて困ったように言うメルヴィン王女だけど、わたしは今の返事を聞いて確信した。彼女、絶対にまだ何か隠していることがある。


「……分かった。失礼だが、君は女性なのか?」

「見ての通り、()()女性ですよ。心は男ですが。別に女性の姿になることに抵抗があるというほどでもないんですけどね」

「リーシャは知っていたのか?」

「わたしは彼の素性を調べていませんでした。でも初対面でなぜか自分から言われたので、性別のことは知っていましたよ。リジーも同じく。なので男性名に近い『ルヴィ』という名で呼んでおりました。本人の希望でもありましたので」

「そうか……」


 ルヴィは、どれだけ鍛えても今以上に力を強くしたり体力を付けることはできないらしい、と言いましたよね。それが成長期の女性だったり男性相手ならわたしもまだ頑張れと言いますが、ルヴィはそのどちらにも当てはまりません。だから努力とかそういう問題じゃない。それを知っていたので、わたしはその面でルヴィに何かを言うことはありませんでした。それでも彼、お転婆王女なんてものではないだろうなと思いますし、他の部分で補えているので十分なんですけどね。


 心と体の性別が違う、という話はルヴィに出会うまでそんなものがあることすら知らなかったのですが、『個性のようなもの?』と言えばそんな感じだと言いながら笑われたので、たぶん少し違うけど似たような感じみたいです。


「混乱するのも当然だと思います。普段の姿でお伝えしても信じていただけないと思いまして、今はリーシャ様にドレスや宝飾品をお借りし、こうして着飾っておりますが、中身は変わっていないとお思いくださいませ」

「え、え……」

「シエル様も、今のわたくしはただのメルヴィンですからね。これまで通り接していただければと思います」


 誰よりも混乱しているのが一目で分かる反応のシエル様に対し、彼女は苦笑しながら自分が何者でもないことを伝えた。普段なら面白がるところだけど、自分が当事者だから苦笑するしかないのでしょうね。気持ちは分かる。


「ルヴィとはどこかで顔を合わせたことがある気がしていたんです。いつもの姿では気付けませんでしたが、王女だった頃のルヴィと幼い頃のわたしが出会っていたのでしょう」

「ふふ、いつか再会する時が来そうだなって思っていたんだよね。だけど数年ぶりに会ったリーシャ様はボロボロだし、かと思えば雇われた時にはこんなに綺麗になっちゃってるし。改めて傾国並みの美人だったあの方のご息女なんだなって思ったよ」

「安心して、王女メルヴィンとしてのあなたは綺麗だし、ルヴィとしてのあなたは王女の時より幸せそうでもっと素敵だから」

「あら嬉しい」

「ということで旦那様、把握のほどよろしくお願い致しますね」

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