1 対抗意識
「────リジーと旦那様は残り三周、ルヴィとレイは五周ですよ!」
晴れ渡る空の下、椅子に座って優雅にルナと戯れていたわたしの声が響く。八月に入った今、まだ朝の七時頃だというのに外は日中と変わらぬほど太陽の暑い光に照らされている。
わたし達フェルリア公爵家に住む面々は、現在屋敷の敷地内にある訓練場で肉体訓練をしているところだった。いつもはわたしとリジー、ルヴィ、イアン達三兄弟の六人なんですけど、今日はそれが少し違うんですよね。
お姉様がお義兄様と結婚し、元フランクス家がユリウスの物となったことで、イアンとフォルトは約束通りユリウス領に向かいました。そのため、あの二人も引き続き向こうの訓練場で訓練を続けるように言っていますが、こちらで一緒に訓練をするのはリジーとルヴィ、そしてレイだけになります。二人がユリウスに行ってから少し時間が経つので、この生活にもだいぶ慣れてきたところ。
ですが今日はいつも通りではありません。前に旦那様から『リーシャの訓練を一緒に受けさせてほしい』と言われたため、旦那様もわたし達の中に混ざっているんですよ。頑張って早起きもしてくださいました。
「今日はみんな頑張りますね。やっぱり旦那様に対抗意識でも燃やしてるのかな?」
いつもはルヴィあたりがバテている頃なのに。今日は旦那様が参加されるとのことで、わたし考案のハードメニューとなっている。一部を紹介するなら、皇城の巨大な闘技場より少し小さいくらいの訓練場内を十周走る、腹筋と腕立てそれぞれ千回、みたいな感じですかね? これが終わったら武器を扱う訓練だとか、その他にも色々ありますけど。
ちなみにわたしは訓練場内でやる訓練はすべて二セットずつ終えた。だからこうして休憩しながら、調査を任せていたルナから報告を聞いているというわけです。
「リ、リーシャ様っ! 僕が死んだらお墓に美味しいものを供えておいてくださいね……!」
「その前に休みなさいよ」
ルヴィはどう頑張っても今以上の体力が付かないみたいなんですよね。それでもそこらの騎士よりよっぽどマシですし、そもそも彼は遠距離特化なので多少は体力面でハンデがあっても構わないのですよ。だからいつもは途中で休憩することを許可しているのだけど、今日は旦那様もいるから諦めたくないらしい。どうしてあんなにバチバチしているんだろうね、本当に。
『主様、どうする? もう一回調べてみる?』
「そうね、お願いするわ。可能なら夜に調べてもらった方が確実かも」
『分かった』
報告を終えたルナに餌を与え、再び空に飛んでいくのを見送ってわたしも立ち上がる。どうせ待っている間暇だし、わたしももう一度混ざろうかな。
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