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137 大嫌いになる日は

「なんで誰も助けてくれないんですか……!」

「だって、今のソフィアはリーシャさんに感謝を伝えているからね。僕が口を挟むのは違うかなって」

「……知っていましたけど、本当に嬉しいんですね。口数がいつもより多いじゃないですか……」


 お義兄様は基本無口に近いんだけど、嬉しい時や楽しい時は普通の人と同じくらいの口数になる。分かりやすいですよ、本当に。


「お、お姉様。そろそろ泣き止みましょう? せっかくのお化粧が台無しになってしまいますよ」


 大丈夫、わたしは意地でも泣きません。こんなに人がたくさんいるところで主役でもないわたしが泣くわけにはいかないので。その代わり、帰ったら疲れて寝落ちするまで泣くかもしれませんけど……


「……お見苦しいところをお見せしてしまって申し訳ありません。幸せな涙なので許してくださいな」

「おいで、ソフィア。そろそろ他の方にも挨拶に回らないと」

「そうね。お二人とも、改めてご列席いただきありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願い致します」

「はい」

「公爵様、以前は言えませんでしたが、リーシャのことをよろしくお願いします」

「お任せください、義姉上。あなたとの初対面でも忠告されていますからね。約束はしっかり守りますよ」


 お姉様との初対面……ああ、わたしがフランクスの家を出た日ですね。お二人は何か内緒話をしておられましたし、その内容はお姉様からの脅しだったと後で旦那様に聞きました。


 だけどお任せください、なんて言えた立場じゃないでしょうと思って足を思いっきり踏みつけてやりました。案の定恐ろしく綺麗な笑顔が返ってきたので気付かないふりで無視し、『それでは失礼します』と微笑んでお姉様達の傍を離れた。隣から感じる圧は知りませんよ。わたしは悪くないです。


「驚いたな。君の泣きそうな顔は初めて見た」

「それはそうでしょうね。泣きそうになるような場面は今までなかったので。そういう旦那様は感動というものすら知らないのでは? それがどんな種類であっても、旦那様が涙を流す姿は世界中の誰よりも想像できません」

「君に『大嫌い』と言われたなら少しは泣くかもしれないぞ? それが心からのもので、本気で言っているのならな」


 今すぐにでも言ってあげましょうか? ……なんて、余程のことがない限りそんなことにはなりませんよ。だってわたし、旦那様のことを嫌いだと思ったことがないので。どちらかと言うと『苦手』ですし、それよりも正確に言うのならイラッとさせられる相手、という感じですからね。


「嫌う理由がないので、旦那様の涙を見ることができる日は今のところ来なさそうです」

「……それは良かった」

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