134 心配は当然
「シエル様。あなたのご主人、ちょっとぶっ飛ばしてもいいですか?」
「どこに向かって?」
「庭園の噴水です。目が覚めるのでは?」
「そうですね……でも全身濡れてしまうのでお着替えが大変かと。生垣あたりはいかがです?」
「それもいいですね」
「おい、二人揃って私を殺す気か? この距離と高さな良くて大怪我だぞ。恐ろしい会話をするな」
割と本気で話し合っていると、身の危険を感じたのかいつの間にか数メートル離れたところまで逃げていた旦那様に口を挟まれた。
「あら、冗談に決まっているじゃないですか。おほほほ」
「わざとらしい笑い方をするな」
「言っておきますけど、心配しているのはわたしだけじゃないですよ。使用人達もみんな心配しているようだったので、代表してわたしが休むように伝えたのです。部下を不安にさせないようにちゃんと休むのも上司の仕事なのでは?」
どこまでもわたしが言えたことではないのですが、それは今は良いんですよ。さっきからずっとリジーを筆頭にルヴィやイアン達から圧を感じるけど、今は旦那様の方が酷いので。
「……分かった。明日までは休もう」
「そうしてくださいな。また無理をしすぎるようなら遠慮なく噴水まで連れて行って差し上げますから、そのおつもりで」
「ああ」
これで多少はマシになるでしょう。忙しいのは仕方ありませんが、寝食くらいはしないと体を壊してしまいます。お仕事の片手間で良いのでせめて一日一食は取って、一時間だけでも寝るべきです。わたしも旦那様ほど酷くはないので、これくらいなら言っても文句はないはず。
「それでは、わたしはドレスに着替えて髪を整えなければならないのでこれで失礼します」
「時間になったら迎えに行く」
「分かりました。ではまた後ほど」
旦那様は今から朝食だけど、わたしはもう食べ終えて部屋に戻るところだったので、ちょうど入れ違いになってしまいました。ですが予定通りちゃんと体を休めるように忠告できたので良かったです。
わたしは旦那様のような気遣いなどできません。倒れても放置で訓練しますから、そうならないよう気を付けていただきたいですね。どんなに根を詰めて仕事をしても倒れてしまっては意味がありません。ただの時間の無駄ですから、そのあたりの自己管理はちゃんとしてくださいな。
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