131 今後の仕事
「……イアン、リーシャは一度決めたらそう簡単に折れないと思うぞ。リーシャに認められ、心からの信頼を得ているだなんて妬けるな」
「たしかにそうですけど、後半の冗談はいらないのでお黙りくださいませ」
どこが妬いている顔なんですか。あなた、嫉妬という感情など知らないのでは? いつだって求められる側でしょう。
「……本当に俺で良いのですか? メルヴィン様のようにもっと優秀な方はいらっしゃると思いますが」
「え、僕?」
「ルヴィは絶対にないわ。執事という真面目な仕事を自由人のルヴィができるはずないもの。性格で考えてもあなたが最適なのよ、イアン。どうしても嫌だと言うのなら考え直すけど、考え直したところでどうせイアンに頼むことになるわよ」
「そうですか……分かりました。至らない点もあるかと思いますが、精一杯勤めさせていただきます。よろしくお願い致します」
「ありがとう。こちらこそよろしくお願いしますね」
旦那様はお忙しい中呼び出したのにほとんど空気のように扱われ、それでも気にすることなく、むしろ先ほどのように手助けしてくださるから助かる。メインはイアン達兄弟の話ですが、手続きの書類を書いていただきたかったのと、旦那様にも伝えておくべきだと思ったので同席してもらいました。
たくさんのものをいただいているだけでなく、度々ご迷惑をおかけしていますし、近いうちにちゃんとお礼をしたいですね。また考えておきましょう。
「次にフォルト。フォルトは成人するまでは執事見習いとして、主にイアンの補佐を担当してください。恐らくイアンの仕事量はかなりのものになりますから、休憩させるのもあなたの役目です。お願いできますか?」
「はい。イアン兄さんの補佐というのは、具体的にどのようなことをすれば良いですか?」
「なんでもいいわ。イアンもあなたの実力は理解しているでしょうし、基本的にはイアンの指示に従ってくださいな」
「分かった」
十歳の子供でも、真面目に学んでいれば仕事はできますからね。十歳からフランクス伯爵家を守ってきたわたしが言うのだから間違いありません。リジーだってわたしが生まれた時……つまり、八歳の頃にはもうわたしの侍女として働いていたらしいので。
普通の子供はできないかもしれませんが、フォルトはリジーの教育のおかげで実力で言うなら一人前です。執事見習いなのは子供だから。子供に大量の仕事を任せるわけにはいきませんので。
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