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130 信頼の証

「単刀直入に言います。旦那様、イアンとフォルトを解雇にしてください」

「え……」

「なぜ?」

「ユリウスで雇いたいからです。お願いする形になっていますが、確定事項なので手続きをお願いしますね」


 そう言うとイアン達兄弟は驚いて固まり、旦那様は面白そうに口角を上げた。ちなみにリジーはこのことを知っていました。事前に話しておきましたからね。

 彼らは元々わたしの使用人ですが、なぜかルヴィの時と同じく旦那様がお給料を払うことになったため、ユリウスで雇うには一度解雇してもらわなければならないのですよ。なんでいつもわたしにお金を使わせてくれないんですかね? 経済が回らなくなっても知りませんよ?


「いいだろう」

「ありがとうございます。二人もいいですね?」

「は、はい」

「はい」

「では詳しくお話しします。わたしがあの日、あなた達を雇いたいと言う前に二通の手紙が届いたのは覚えていますね? あの手紙はわたしの姉と皇帝陛下からの物でした。そして皇帝陛下からの手紙に書いてあったのが、フランクスの領地と屋敷がわたしの手元に返ってくる、ということです」


 あの手紙にはお姉様の爵位返還などのことは書いていなかったけど、領地や屋敷についてはあの時点ですでに聞いていた。そのため、わたしがユリウスにいなくても安心して屋敷を任せられる人が必要だなと思ったんです。

 するとあら不思議。ちょうど目の前に利害が一致していて、雇われてくれそうな人がいるではありませんか。ついでにその人達はわたしがロードであることを知ってしまったから、雇えば口封じもできる……! ということで、彼らを雇うことに決めました。


「あの時、使用人としての知識と実力をしっかり身に着け、ある程度戦うことができるようになれば、ユリウスの屋敷はあなた達に任せようと思ったのです。経緯は分かりました?」

「つまりあの時から今までずっとリーシャ様の計算通りで、上手く手のひらで転がされてたってわけ?」

「すべてではないけど大体はそうね。怒りました?」

「いや、別に怒りはしないけど……なんか複雑」


 まあいいじゃないですか。自分で言うのも何ですが、わたしの傍で生きるというのはそういうことですよ。だってほら、普段からわたしに振り回されてるリジーなんて眉一つ動かさないでしょう? 彼女はわたしが生まれた時から一緒にいますからね。もう慣れているんだと思います。


「あなた達に任せる仕事を説明します。まず、イアンはユリウス公爵家の執事長として、わたしが屋敷にいない時は屋敷全体の指揮をしてください。これらのことをリジーには事前に伝えていたので、執事としての技能も身に付いているはずですよ」

「いきなり執事長ですか……認められているのは嬉しいですが、俺は務まる気がしません。それに、自分を襲おうとした人間に大切な屋敷を任せても良いのですか?」

「わたしはあなたが努力している姿をずっと見ていました。イアンならできると判断したから頼んでいるのですけど、わたしの気持ちに応えてくれる気はないのですか? わたしを襲おうとしたことに関しては未遂ですし、いつまでも過去のことを気にしていても仕方ないでしょう。過去に囚われて優秀な人材を逃すほどわたしは馬鹿ではありません」


 それに、イアンとレイは大切なフォルト(家族)を助けるために行動したのでしょう。手段はともかく、大切な人を守るために精一杯のことをしようと行動できるのはすごいことだと思います。彼らはいまだに罪の意識を持っているみたいですが、わたしは一度も気にしていません。何度も言っていますが未遂ですので。


 これは出会ってからずっと、わたしの期待に応えようと求められているものを正確に理解し、すべて行動で示してくれた彼らへの信頼です。


「わたしからの信頼、ぜひ受け取ってくださいな」

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