127 禁書室
ここは隠し部屋の一つである禁書室だけど、大切な手続きをするための部屋でもある。この部屋の前にいる黒猫はフランクスの屋敷ができた頃からこの部屋を守っていて、部屋に入ったり手続きをするにはいくつかの条件がある。それはフランクスのロードなら全員持っている『生き物と意思疎通できる力』があること、当主であること、そして先代当主の情報を正確に言えること。
生き物と意思疎通できる力は特殊能力ではありませんが、フランクスのロードが能力の副産物として手に入れた力です。この力がないとまず会話することすらできませんね。そしてここは特別な場所なので当主でなければならないのは当然として、先代当主の情報を伝えなければならないのは、現当主しか知らない情報もあるからです。これに関しては代によって違うみたいですよ。どの代でも、必ず当主しか知らない情報を一つは答えることになっているのだとか。当主であることの証明です。皇族は知っている場合もありますけど。代替わり前にその時の当主が次代の名前や情報を提出するので、現当主が一人で来ても相手にしてもらえるわけです。
ここの門番である黒猫は戦闘力や情報力など、すべてが謎に包まれた存在です。わたしにもよく分かりませんが、一つ言えるのは当主だけは絶対に裏切らない。何の根拠もありませんが、それだけは間違いないのだとか。わたしも何となくですがそんな気がしますね。
『お待たせしました。変更内容を教えてください』
「家名が変わります。現在登録されているのはフランクス、新たな家名はユリウス」
『現当主の名はリーシャ・ロード・ユリウス。今後はユリウス姓を名乗るということでよろしいですか?』
「はい」
『爵位も公爵に変更しておきますね』
「言い忘れていました。よろしくお願いします」
『手続きは以上でよろしいでしょうか?』
「いえ、もう一つ」
これは伝えておくか迷ったことだけど、万が一に備えて言っておいた方が良いでしょう。この黒猫はすでに知っている情報だろうけど、直接こうして伝えなければ知らないふりをされることもあるからね。
「約一ヶ月前、わたしは倒れました。その時に確信しましたが、二年ほど前から急激に体が弱っています。余命宣告された時は『二十代半ばまで生きられるかどうか』と言われたのはご存知ですよね?」
『はい』
「恐らくですが、わたしはニ十歳までに死にます。つまり余命は約二年半以下ですね。それまでにわたしのすべての情報を更新できるように準備をしておいてください」
『次代についてはどうなさいますか?』
「また検討しておきます」
『承知致しました。以上でよろしいでしょうか?』
「はい、ありがとうございます。失礼します」
禁書室での用事は終わり。あの優秀な黒猫はしっかり手続きしておいてくれるでしょう。この後は他の通路や部屋を確認して、お姉様のところに戻りましょうか。
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