126 隠し通路と隠し部屋
フランクスの屋敷の規模は皇都にあるお城のようなフェルリア公爵邸にも劣らない。皇都の屋敷は普通のフランクスと違って、フェルリアは領地と皇都、どちらの屋敷もあの規模ですけどね。
その大きな屋敷を借金してまで綺麗な状態で保っていたのにはちゃんと理由があったので、お姉様も同じく綺麗に管理してくださっていたのはとても助かりました。
「お姉様、わたしはお母様のお部屋に行ってくるので、そのまま整理を続けていてください」
「分かったわ。安心して、あの部屋には誰も入らないように言ってあったから」
「ありがとうございます。ではまた後で」
お母様の私室って、実は代々フランクスのロードの当主が使っていた部屋なんですよね。仕事量が多すぎて部屋に帰る暇がなかったため、わたしは執務室を私室にしていましたが、これからはあそこがわたしの部屋になります。
ロードの屋敷にはたくさんの秘密があるんですよ。その一つは、当主の私室には全ての隠し通路と隠し部屋の鍵が隠されていること。つまり、もし誰かに侵入されても鍵となっているスイッチを押せば閉じ込めることができるというわけですね。そのスイッチが隠されている場所も、フランクスのロードの血を持っていなければ開けることはできません。
「たしかここよね……」
スイッチの場所は記憶にあったので、お母様のお部屋に入ったら迷わずそこに向かった。わたしはロードの血を持っているため、何の抵抗もなく鍵となっているスイッチに触れることができる。人が来ない内に中に入り、すぐに内側から鍵をかけた。
ここに来たのは中で異常が発生していないか確かめるため。視た感じは何も起こってなさそうだったけど一応ね。
「相変わらず迷路のようだわ。もし誰かに侵入されてしまっても、正しい道を知っているのは当主と当主が話した相手だけだから、迷ってそのまま餓死するでしょうね。冬なら凍死もあり得るし」
数ヶ月入らなかったくらいで迷ったりはしない。結婚前は緊急で任務が依頼された際、この広い屋敷から最短ルートで抜け出すためにかなりの頻度で使用していた。何年も使い続けた場所をそう簡単に忘れるはずがない。体が覚えている。
「────わたしは現当主リーシャ・ロード・フランクス。先代当主の名はエミリア・ロード・フランクス。先代当主の享年は三十、命日は五月七日。死因は毒殺」
『御用は?』
「我が血筋全体の情報を更新します。手続きを」
『承知致しました。少々お待ちください』
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