123 見抜かれまして
「公爵様と奥様は恋愛結婚ではないのでしょう?」
「え!? な、なぜそう思われるのですか?」
「奥様を見ていれば分かりますよ。公爵様に対して熱量を感じませんし、それどころか少々冷めているように見えますからね」
……何ということでしょう。あの後、すぐに採寸の準備が始まったので旦那様とシエル様には退室していただきました。大人しく下着姿になり、リジーも手伝って上から下まで測っている最中、いきなり何の脈略もなく旦那様との関係について言われてしまいました。
「ですが大丈夫ですよ。恐らく九割以上の方は気付かないでしょう。お二人ともお話しされている時の雰囲気が柔らかいので」
「……それは良かったです」
「奥様はすごくスタイルが良いですね。これほど顔、スタイル、性格の良さ、その他すべて揃っている方など中々いませんよ。ご結婚前に何度か皇都でお見かけしたことがありますが、磨けば光る原石のような方だと常々思っておりました。ですからこうしてお仕事をいただけてとても嬉しいです」
「そうですか。旦那様とマダムはお知り合いだったのですか?」
「ええ。ありがたいことに皇室と筆頭公爵家御用達の店ですからね。今回の件は急な話でしたが、ご贔屓にしていただいている公爵様がご夫人のために衣装を仕立ててほしいとおっしゃるものですから、話だけでもと思いこうして訪問させていただいたのですよ。気になっていた方ではありますが、私の質問に対する返答次第ではお断りする予定でした」
なるほど、たしかに帝国一のオートクチュールですから名家の御用達なのも当然ですね。そんな素晴らしい方にドレスを仕立てていただけるとは光栄だわ。それと、やっぱりわたしの返答次第で断られていたかもしれないのですね……
「お忙しい中、わたしのためにありがとうございます」
「いえいえ、とても光栄に思っていますよ。今後はフェルリア公爵夫人、またはユリウス公爵としてのご依頼もお受け致します。いつでもご連絡くださいね」
「よろしいのですか? ありがとうございます」
これは……中々すごいことなのでは? 今後は旦那様を通さなくても衣装を仕立てたり宝飾品を購入させていただける、ということですよね。帝国一番のお店に……
「ええ。それはそうと、本当にお美しいですね。お母君はたしか……」
「エミリア・フランクスです」
「絶世の美女、傾国の美女と有名だったお方ですか。実際にこの目で見たことはありませんでしたが、たしかにお母君と瓜二つだと有名な奥様がこれほどお美しいなら誇張でも何でもなかったのでしょうね」
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