117 オートクチュール
「これからまた忙しくなりそうだな」
「そうですね……ですがまずはお姉様の婚姻の儀がありますから、そのための準備をしなければなりませんね」
「それについてだが、明日は何か予定があるか?」
明日……明日は特に何もなかったはずだけど、急に任務が入ることがあるから分からない。今のところはこの鈍った体を元に戻すために訓練しようと考えていますが……
陛下との対談を終え、わたしはフェルリアの屋敷へ帰りながら今後のことについて旦那様とお話ししていた。元々フランクスのものだった領地と屋敷がわたしの手元に戻るとなると、今まで一時的に免除されていたユリウスの当主としての仕事もしなければならなくなる。加えてまだ荒れたままの領地も何とかしなければならない。今度は邪魔な人達がいないからスムーズに進むと思いますけど、今までとは状況が変わってくるから旦那様とも良く話し合っておかなければならない。
「今のところ外出の予定はありません。それがどうかなさいましたか?」
「予定がないのなら急で悪いが、オートクチュールを呼んでドレスを仕立てたい。宝石商も呼ぶ。病み上がりで疲れているだろうが、これ以上先延ばしにすると婚姻の儀にドレスが間に合わないだろう?」
「あ……そういえばそうですね。訓練があるので午後からでも大丈夫ですか?」
「ああ。三十着ほど仕立てておくと良い。宝飾品も同じくらい必要だろう」
「そ、そんなに必要ないと思いますよ!? 婚姻の儀の分だけで十分です」
筆頭公爵家って恐ろしいね。オートクチュールなら一着でも相当な額になるでしょうに。それに加えてアクセサリー類ですよ? それを三十セットって……
フランクスにいる時も意味がないとはいえ、一応貴族令嬢に見合った生活をさせてもらっていました。なのでドレスや宝飾品もいくつかはあるんですよ。お母様の形見もありますし、それらを嫁入りの際に持ってきているので十分だと思うのですが……?
「君は公爵夫人だ。君は今の生活に満足しているのだろうが、いい加減経済を回すべきだと思うぞ?」
「それを言われると返す言葉がありませんね……分かりました。公爵夫人らしく振舞わなければなりませんし、多めに仕立てていただくことにします。ありがとうございます」
「ああ。それから、明日はいつも通りに訓練するのか?」
「いえ、そうしたいところですがまた体を壊してはいけないので、明日は少し軽めにしようかと」
「それが良いだろうな。分かった、では手配しておくので明日の午後はそのつもりで」
「はい」
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