116 ユリウス公爵の邸宅と領地、そしてお姉様の今後
「陛下、それでしたらフランクス家はどうなるのですか?」
フランクス伯爵領は伯爵とはいえ、ロードが所有する土地であっただけに本当は恵まれた環境にある。金銭面などで手が回っていなかっただけで、ちゃんとすれば王家の直轄領にも十分成りえるくらいではあると思う。訓練所なんかは高頻度で通わなければならなかったから結婚してからは大変だったけど、ユリウスの領地となれば楽に行き来できるようになるでしょうし、屋敷もお母様との想い出があるから返ってくるのは助かる。管理は大変だけど。
「再びわたしの物となったらお姉様が困るかと存じますが」
「相談した結果、フランクスはソフィアの代を最後に爵位を王家に返還することになった。表向きは両親の罪の責任を取って、本当は嫁入りがリーシャに領地と屋敷を返すちょうど良いタイミングであるため。表向きの理由により、こちらもまたちょうど良いから元はフランクスが所有していたものをリーシャに明け渡すのだと公表する。領民も元は君が管理していた領地なのだから歓迎するだろう」
「えっ……お姉様、爵位を返されるのですか? わたしは何も聞いていなかったのですが」
これって陛下の話し方からしてもう確定事項になってしまっていますよね? お姉様、相談の一つくらいしてくれたら良かったのに……
「義姉上がリーシャに相談しなかったのは、そんなことを言えば君が遠慮すると考えたからだと思うぞ」
「う……否定できないです……」
だって領地のことはわたしだけでなくお姉様も気にかけてくださっていましたし、当主になってからもできる限り早く立て直そうと頑張っておられましたもの。
「それに爵位がなくなってしまったら、侯爵家の令息であるお義兄様と結婚できないのでは?」
「問題ない。嫁入りと同時に屋敷と領地はユリウスのものとなるが、爵位はソフィアの代で返還としているため、彼女の子には継がれないがソフィアだけはまだフランクス伯爵家の人間となっている。分かり辛いが、領地と屋敷がなくなるだけでソフィアは一生フランクス伯爵のままだ。近いうちにノア侯爵夫人にもなるな」
「あら、そうなのですか? あまり前例はなさそうな話ですね」
それなら安心。わたしに返されるだけならお姉様が何かを失うわけでもありませんし。わたしはさらに忙しくなってしまいそうですがそれは仕方ないですね。
「そうだな。話は以上だ。ソフィアの婚姻の儀が終わると同時に明け渡されることになっているからそのつもりで」
「承知致しました。また何かあればご報告しますね」
「ああ」
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