11 フェルリア公爵家の女主人
「ここが君の部屋になる。私は長期間外出することがあるから顔を合わせない時期があっても気にするな。この屋敷の女主人は君だから、何でも好きに使えば良い」
「ありがとうございます。ちなみにわたしに就く予定の使用人はいますか? 色々と見られたくないものが多いので遠慮したいのですが」
侍女はリジー一人で十分なんだよね。書類の類もだけど、訓練しているところや任務の準備など、見られると都合が悪いものも多い。そういう意味でも侍女はリジーだけが良いかなと思ってるけど、さすがに公爵夫人の侍女が一人だけは駄目ですかね?
「いや、そう言うと思ってまだ決めてなかった。必要なら自分で選ばせようと思っていたところだ。不要ならそれで良い。リジー……だったか? 彼女は信頼できるのだろう?」
「はい。わたしの唯一の腹心ですから。リジー程有能な侍女はいませんよ」
ふふん、と誇らしく思って笑うと呆れることなく、むしろ感心したようだ。
「君には腹心が一人しかいないのか。不便ではないか?」
「余計なお世話ですよ。リジーは一人で百人力なんですから」
感心した、と思ったけど違った。いや、違わないんだけど腹心一人でやっていけてるところに感心したんだろうね。でも仕方ないじゃないですか。実家で味方はリジー以外にいなかったのですから。
あなたと違って主人に物申せる、まともな使用人を雇う余裕がなかったんです。別に良いんですよ、リジーは有能だからね!
「分かったわかった。ちなみにそっちの扉は私の部屋に繋がっている。私の部屋は私室兼執務室だ。分けるのが面倒だからな」
「分かりました」
「それから、訓練場も自由に使ってくれて構わない。君の本業で必要あるか分からないが……」
「ありがとうございます。それと一つお聞きしたいのですが、この屋敷の隠し通路はわたしも使って良いのですか? 視た感じ、結構な数がありましたけど」
さすがに隠し通路を使うのは駄目かな? わたし的には使えた方が便利かなって思うんだけど、まあなくても問題はないはず。
フランクスの屋敷には隠し通路や隠し部屋が数えきれない程にある。わたしの血筋は本業が特殊なので、その分そういったものも多いのだ。
「見ただけで分かるものなのか? 私は当主だから把握しているが、見ただけでは分からなかったぞ」
「こういうことは得意なので。場所や繋がっている先まですでに分かっていますけど、どうでしょうか?」
「君に使うなと言っても勝手に使うだろうな。それにこの屋敷の女主人はリーシャだと言った。好きにすると良い」
「助かります。ありがとうございます」
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