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108 フォルト

「…………」

「……あの、申し訳ありませんが体に力が入らないので、その……寝台に寝かせていただけませんか? 重いかもしれないですけど……」


 何を考えておられるのか分かりませんけど、この距離は少々危ない気がしてですね……体調不良といっても風邪や病気ではないので移ることはないのですが、なにせアルヴィン・ロード・フェルリア様は大変整った顔立ちをしておられますので……


「顔が近くて恥ずかしい、んですけど……」


 この静まり返った空気も羞恥心を煽ってくる。わたしが言うとやっぱり大きな溜め息を吐いて、それでもちゃんと寝台に寝かせてくださった。耐えられなくなってシーツに潜ると、微かに旦那様の笑い声が聞こえた。目元だけだして様子を窺えば、にやりと意地悪な笑みを浮かべる。


「だから、嘘は良くないと言っただろう? 意地を張らずに今日は寝ていろ」

「う……お見苦しいところをお見せしました……」

「ちょっと旦那様、さり気なくイチャイチャしないでくださいよ。リーシャ様がご無事で良かったですけど」

「君もすれば良いだろう」

「旦那様はどうでも良いけど、僕のせいでリーシャ様が浮気者扱いされたら嫌じゃないですか」


 だからなんで、そこの二人はいつもマウント合戦をしているの? そもそもイチャイチャなんてしてないです! 不可抗力! 心配しなくてもわたしはルヴィと不倫する予定はないし、旦那様も本当に夫婦と言って良いのか分からない関係です。

 不倫も浮気も、わたしは絶対にしないよ。あのクズ両親のようにはなりたくないから。恋愛感情を抱いていない旦那様には楽に離婚できるよう、いまだにそれとなく推奨していますが。


「リーシャ様、本当に大丈夫なの?」

「残念ながら動けなかったけど気持ちは元気よ。本調子に戻ったらまた稽古をつけてあげるわ」


 そう伝えると嬉しそうに頷いた。フォルトは三年前にご両親を亡くしている。今は十歳。つまり亡くしたのは七歳の時。お兄様二人が親のような存在でもあるそうだけど、それでも幼くして両親を亡くしたことはショックが大きかったのか、夢を見てうなされることが多々あったみたいなんだよね。わたしも今のフォルトと同じ年齢の時に最愛の母を亡くしているから悲しみは良くわかる。なのでたまに話を聞いてあげたりしてる。


 その効果もあってか、この屋敷に住み込みで働くようになってからはうなされることが減ったそう。それでもやっぱり身近の人に何かあると発作のように精神が不安定になることもあるらしい。

 今回は大丈夫だったようだけど、子供にも心配をかけてしまって本当に申し訳ない。反省しないといけないね。体が弱いのはどうにもならないんだけど……まあ、気合いで何とかなるでしょう。

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