106 おはようございます
◇
「ん……」
「あら、おはようございます。リーシャ様、お体の調子はいかがですか?」
「……? からだの、ちょう……し」
「はい。数年ぶりに体調不良で意識を失ってしまったようでして、三日間眠っておられましたよ」
…………? 何の話かな。わたし……なに、していたんだっけ……?
「まずは水を飲んでください。いきなり喋ってはいけませんよ」
「…………」
屋敷内の気配で意識が覚醒してきた気がする……最後の記憶が任務で疲れて寝台に入ったところ。そこから先の記憶が何もないんだけど。
「う……あたま、痛い。体が怠いんだけど……」
「任務から帰って来られて、眠ってからそのまま意識を失ったのだと思います。半日もすればただの睡眠に変わりましたが。頭痛と気怠さ以外に具合の悪いところはありますか?」
「たぶん、まだ熱あるよね。面倒だったから結構長時間能力を使っちゃったの……それが駄目だったのかな。ここ数年は倒れることがなかったから油断してたよ……」
記憶がないのは眠っていたからなのね。それなら記憶がある方が不思議だわ……
決して強い相手というわけではなかったんだけど、あまりにも人数が多かったのと状況や場所が不利だったから確実性を取ろうと思って、数種類の能力を同時に使用してしまった。健康体でもそれは体を壊しやすいからよろしくないんだけど、それを体が弱いわたしがやったらこうなるのは当然だよね。考えなしな自分を叱りたい。
「倒れていたからでしょうか? 珍しく体の不調を隠せていませんね。今日は何があっても絶対安静にしてください。これは侍女ではなく医者としての命令です」
「隠せてないのはたぶん体が疲れているから……でも一日体を動かせないのは辛いよ? 三日間眠っていて体を動かしていないのに、加えて今日も何もできないなんて……絶対に腕が落ちてるよ」
「大丈夫です。その程度で弱くなるリーシャ様ではありませんので。早く体を動かせるようになるためにも、今日は大人しくしていてくださいね。何はともあれ、ご無事でよかったです」
心配してくれたのは分かる。目元に隈ができているから、忙しいのも相まってあまり眠れていないんだろうな。
そういえば、任務から帰った次の日は陛下と対談の予定が入っていませんでした? ……ちょっと、わたしはどれだけの方にご迷惑をおかけしたのでしょうか。考えるだけで申し訳ない。申し訳なさで胃痛と腹痛と、ついでに頭痛が……陛下も、一緒に行く予定だった旦那様もお忙しいでしょうに………
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