104 リーシャ様は
「……リーシャ様、もっと食べてください。細すぎますよ」
しっかり食事を取り、睡眠時間が増えてからリーシャ様は以前のような不健康な細さではなくなりました。白く透明感のあるお肌はハリを取り戻し、前当主であるエミリア様と同じ色の髪も艶が出て綺麗に。エミリア様と瓜二つであるリーシャ様は、間違いなく帝国一番の美少女でしょうね。ご結婚されたことでたくさんのものを取り戻しているように思います。
ですが健康的で出ているところと締まっているところのメリハリがあってスタイルが良いだけとはいえ、細いのは変わっていません。こうして直接お肌に触れていると折れてしまわないかと心配になってしまいます。
ご本人は最近甘いものを食べ過ぎて太ったと嘆いておられましたが、私としてはもっとお肉を付けてほしいところですね。食べ過ぎたと言いつつ、少食なので甘いもの以外はあまりお口にされませんし。
「リジー」
「旦那様、入ってこないでくださいね! お着替え中ですので!」
「分かっている。リーシャは大丈夫なのか? 顔色は?」
「問題ありません。リーシャ様は能力関係で体調を崩された場合、顔色の変化も呼吸の乱れもないのですよ。風邪は症状が違うので変化もありますが、今回のような場合は良くないことですが慣れておられるので」
夫である旦那様であっても、リーシャ様のお体を許可なしに見せるわけにはいかないので急いで声をかけましたが、意外にも真面目で紳士な旦那様なので無断で寝室に入ってくることはありませんでした。時間がかかっているので何かあったのではないかと心配されたのでしょう。
「なるほど、それは逆に心配になるな。君は平然としているようだが」
「私も心配はしておりますよ。ですが原因は分かっておりますし、下手に騒ぎ立ててもリーシャ様に負担が掛かるだけです。どうせならこの機会にゆっくり休んでいただきましょう」
今は意識を失っておられますが、もう少しすればただの睡眠状態になると思います。熱がある以上疲労は感じるでしょうが、体を動かすことがないので一応休むことはできるはずです。
「そうか。医者である君がそう言うのなら間違いないのだろうな」
「はい。……あ、せっかくですから詳しく教えて差し上げましょうか?」
「何をだ?」
「リーシャ様はですね、お強いので仕事中に怪我をされることはほとんどないのですよ。ですからお肌は傷一つなく綺麗ですし、お肌の白さはご存知だと思いますが近くで見るとさらに白く見えます。そして、」
「ちょっと待て!」
「何でしょうか」
「大丈夫なのかとは聞いたが、そこまでは求めていない。入ってくるなと言ったくせに余計なことを言って良いのか? リーシャが知ったら痛い目に合うのは間違いなく私だぞ?」
珍しく焦っておられますね。あの家からリーシャ様を連れ出し、さらに心配したり気を遣ったりと大切にしてくださっている旦那様へ、ほんの少しのご褒美でもと思ったのですが。
「この状況で愛する女性の体の話を聞きたくはありませんでした? では最後に、リーシャ様は同性である私でも見惚れるほど、あらゆる意味でお綺麗な方ですよ。大切ならさっさと囲い込んでくださいませ」
「…………」
からかい過ぎましたか。今旦那様はどんな顔をしておられるのか、とても興味がありますね。
そう思い静かに目を閉じているリーシャ様にシーツを掛けて部屋を出ると、何とも複雑そうな顔をしておられる旦那様がいました。リーシャ様に話せば絶対に見たかったと騒がれるでしょうけど、実際に目にしたならお顔を真っ赤にされて俯くか逃げると思います。複雑そうといっても、何となくそんな想像ができる表情をしておられましたので。
ご覧頂きありがとうございます。よろしければブックマークや広告下の☆☆☆☆☆で評価して頂けると嬉しいです。