102 心から感謝していますよ
「あら……」
「綺麗になりましたね」
あの後、少しして目覚めたフォルトは大人に囲まれている状況に困惑していたが、イアンが事情を説明し、彼は幼いということもあって使用人見習いとして働くことになった。もちろん訓練はさせるけど二人よりは緩くするつもり。
三人ともわたしに雇われることが決まり、しばらくはわたしに仕えることよりも自分達の勉強に時間を使うよう伝えた。まずリジーが使用人としての振る舞いの教育、同時にルヴィが戦闘訓練。ルヴィが合格を出したら次はリジーが戦闘訓練も担当する。そしてリジーからも合格が出たらわたしと戦い、大丈夫そうならわたしからも合格を出す。今後については一旦これで決定した。
話もまとまったことだし、ひとまず湯浴みをして着替えてくるようにと薄汚れていた三人に告げた。そして今戻ってきたところ。
「原石だわ……!」
薄汚れていた時でさえ顔が整っているなとは思っていた。それでもここまでとは……
「正装したら貴族と並んでも区別が付かなそう。レイくんは女の子みたいに可愛いですねぇ! リーシャ様、女装させても良い?」
「駄目だよ! 俺が嫌だ!」
「「似合うと思うよ?」」
「口を揃えないでください!」
身長は高くて男らしいのに、顔や声は可愛い系。完全にルヴィの玩具になることが確定したね。哀れだけど旦那様関係のストレス発散のために時々わたしも混ざろうかな。
「たしかにレイ兄さんは可愛い系の顔だから女装したら女の子と間違えられそうだよね」
「この中で一番年下のフォルトがそれを言う?」
「年齢は関係ないんじゃないかな」
それはそう。だってフォルトは十歳のはずなのに、兄弟の中で一番静かで落ち着きがありますし。何ならルヴィを入れても一番大人びているかもしれない。
楽しそうなルヴィを止める人は誰もおらず、結局レイはこの日の夜まで女装の提案をされ続けていた。
わたしはお母様の命日でこんなに楽しく過ごせたのは初めてで、少し不思議な感じだったけどとても救われたように思う。こんな風に過ごせたのは結婚したからだと思うと、旦那様への感謝でいっぱいになりますね。何だかんだ言って、一日中わたしの傍にいて気遣ってくださっていたのはちゃんと分かっていますよ。もちろん旦那様は隠しているおつもりなのでしょうけど。だから───
「旦那様、ありがとうございます」
「何がだ?」
「あまり気にしないでいただけると助かります。恥ずかしいので。ですが感謝だけ」
「……? 分かった」
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