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第5話 推しにごはんに誘われた!

 姫島は続けた。


「私ね。やっぱりあのときのお礼をキチンとしたい。状況が状況だったからあやふやになっちゃったけど、言葉だけじゃ悪いから」


「いえ! お言葉をいだたけるだけで十分満足っす! ましてや生でまたお目にかかれるなんて……」


「ふふふ、本当におもしろい子ね」


「うっす、恐縮です」


「でもやっぱりお礼はしないと気が済まないわ。ヴィリストン姫島が後輩に助けられといてなにもしないなんて、自分で自分を許せないから」


「じ、じゃあ。お言葉に甘えさせていただきます。で、そのお礼っていうのは」


「ん~、じゃあ17時に風背山駅に。あそこに風車小屋あるでしょ? そこで待ってて。迎えに来るから」


「え、迎えって」


「ごはんよ。ごはん。オシャレ忘れないでよ~。じゃあ約束ね」


「は、はいい! おつかれっした!!」


 彼女が去っていったあと、ユウジは一目散に自宅マンションへと戻り、部屋を散らかしながら服を着替える。


 そして駅へと向かい、かなり古くからある風車小屋の前に立ち、姫島を待った。


(一応オシャレってことで前に買ったのおろしたけど……大丈夫かな?)


 ソワソワしながら待つこと数分、リムジンが前に止まったことで啞然とすることになった。


「あら、おしゃれしてきてっていったのに、クス、なんてね。さぁ乗って。おいしいごはん食べれるところ連れってってあげる」


「あ、はい」


 赤いドレスに身を包んだ姫島はもはや別人かと見まごうほどに美しい。

 ユウジを車内にさそう彼女の妖艶な所作は、この世に舞い降りた女神さながら。


 誘われるままリムジンに乗り込み、彼女と向かい合うように座る。

 テレビの中でしかお目にかかれない光景にクラクラしてきた。


(なぁ、これってもしかして……)


 ユウジの妄想がヒートアップ。




『このガキャ! よくもお嬢のあられもない姿を見やがって!!』


『ずみまぜん! ずみまぜん! けして! けしてわざとではないです! 誰にも言ってませんから!』


『やかましいわ! ホントに反省してんなら小指ゆび詰めんかこらぁ!』


『そ、それだけはご勘弁をぉおお!!』


『わめいてどうこうなると思ってんのかぁあ!?』


『泣かすぞテメェこらぁああ!!』


『ひぃいい!?』


 車内で青くなっているユウジを見て姫島はやさしく微笑みかける。


「あらあら緊張しちゃって。そんなにかたくならないで」


「あの、ごめんなさい。やっぱ無理です」


「あれだけ勇敢だったのがウソみたいね。心配しすぎ。別にとって食べようってわけじゃないんだから」


「は、はぁ。あの、指落とされたりとかしないですよね?」


「は? ……変なこと言うのね君。さぁもうすぐで着くわ。会員制の高級料理店なんだけど、私と一緒にいれば大丈夫よ」


「か、かいいんせい? こうきゅう?」


「ふふふ、馴染みないかもね。今日はお礼もかねてだからとびっきりおいしいのごごちそうしてあげる!」


 高速道路を降りて街中へ。

 街から数十キロメートル離れたところにある、港を背にした繁華街。

 

 その一画にある、まるで厳格な洋風の城のような建物。

 ドイツのヨハニスブルク城がこんな感じだろうか。


「さぁついたわ。入りましょう」


「は、はいい……」


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