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第47話 マドカの悩み、そして……!

「お、おぉおすげえ技だな。これをアンタが自分で!? 一から!?」


「えぇ、まだまだ未熟ですが」


「いや、当たったら確実に武器フッ飛ばせるわ痺れ起こさせるわって。そんなの最強じゃん」


「最強、ですか……わたし、その言葉は苦手です」


「え? なんで?」


「たしかに強くあることで人を守れますが……わたしは怖い。いずれその言葉に、その力に自分の魂を乗っ取られてしまうのではないかって。そして、理想を忘れてしまうのではないかって。争いと優劣で物事を決めるよりも、今アナタとこうしているように、話し合って解決したい。そう、平和的な解決です。それもまた、わたしの望む平法の理想」


「……すげぇなアンタ。俺はエミとの約束を守るつもりでまったく逆のことしてたかもしれない。そのせいで、姫島さんやキララ、リスナーの皆に心配かけちまった」


「ユウジさん」


「色々あってさ。もう人生がぐちゃぐちゃになったみたいで。でもアンタのお陰で俺はまた立ち直れたかもしれない。ありがとう」


 ユウジが微笑む。同時にマドカも微笑んだ。


「わたしと話せたことでそうなれたのなら、よかった。アナタの力は修羅に溺れるためのものではありません。アナタの変身はまさしく人を守るための化身。わたしと同類のものだと感じております」


「あ、でも、俺アレだぞ? 魔物と出会ったら、その……」


「あぁ、たしかに大勢の方にわたしの考えを知ってもらいたいというのはあります。でもそれは強要できるものではありません。してはなりません」


「そうか。立派だな。でも、どうしてそこまで? 魔物相手にもそれを徹底するなんて珍しいというか」


 そう、一部の団体が掲げるような暴論と紙一重かもしれない。

 それでも彼女がここまで徹底できるのはなぜだろうと気になった。


「己を悪く言うならば、わたし自身が弱虫なのです。魔物とはいえ命は命。殺しは殺しです。それに耐えられなかったわたしの落ち度なのです」


「いや、そこまで言わなくても……」


「ああ、気分を害してしまい申し訳ありません。話を変えます。アナタは『無手勝流』というのをご存知ですか? 戦わずして勝つこと。もしも魔物相手にもそれができるのならば、それは一体どういう方法であろうか。それがわたしの平法、そして無刀返しの起源でした」


 マドカの瞳により感情がこもる。


「もしかして、アンタ一度も魔物を殺してないのか?」


「そこはアーカイブを見ていただければ。言葉で語るより見ていただくほうがいいでしょう」


 ユウジは息をのんだ。

 目の前にいる少女はここまでノーキルで姫島やキララよりはるかに上の存在に君臨している。

 

 ダンジョンは綺麗事で生き残れるほどやすい場所ではない。

 にも関わらずこうして生き抜いて、なおかつ今も人気を獲得し続けているのは……。


 ────バケモノだ。


 ユウジも大概だとは思われるが、こうして一定の領域に存在するダイバーと出会うとその存在感がヒシヒシと伝わってくる。


「あら、街の明かりがすごくきれい。わたし、風背山市のこの風景が大好きなんです」


「あぁ、すっかり暗くなってきたな」


「では、ここでお開きといたしましょう。今日はありがとうございました。わたしの話なんか聞いて、とても息苦しかったでしょうに」


「いや、そんなことねえって! なんていうか、すごくいい話が聞けた」


「それはよかったです」


「ふぅ、お嬢様系ダイバーってのも悪くないな。あ、でもアイツは無理かなぁ」


「アイツ……?」


「あぁ、紫吹マナってんだけど────」


 …………ガシャン。


「あ、カップが! おい、マドカ?」


「紫吹……マナ…………っ」


 片づけをしていたマドカの手からカップが滑り落ちる。

 それは先ほどでは考えられないくらいに悲痛そうな顔をした彼女の姿があった。

 



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