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第40話 月落ちて天を離れず!

 レストランから出て、少しの時間だけ3人で夜道を歩くことに。


「ユウジ、なんでアイツの話受け入れたの。そりゃあさ、けっこうやばそうだったけど」


「エミみたいな犠牲者を出したくないからだよ。俺はただそれだけ」


「配信はやめないって条件をつきつけたときは、彼も驚いてたわね。あんなに余裕しゃくしゃくだったのに急に焦りだして電話して」


 啖呵を切ったのはユウジからだった。

 てっきりこっちのことに集中してもらえると思って話を進めていたのだろうが、それだけは頑として受け入れなかった。


「上司の方がそれでもいいって言ってくれてよかったわね」


「う~ん、理解ある上司? でもよく言ったよね。協力も配信も両方やるってさ」


「俺は自分のやるべきことをやりたいだけだ」


「やるべきことって?」


「……エミは死ぬ前に、俺に言ってくれた。」



 ────"ユウジ。あたしはアンタならどんな苦難や悲しみも乗り越えられるって信じてる。だからあたしよりもビッグになんなさいよ!"



「"つらいことも楽しいことも全部ふくめて、パーッと生きろ"。アイツは俺にそう言った。じゃあそうする。エミの死は今も悲しいし、ブラックボックスや怪人は憎いけど、それでも楽しいことを忘れちゃダメだ。ダイバーとして」


「でもそれならなおさらアイツというか、そのホークアイ財団の言うこと聞く必要なくない? なぁんか上からの目線で腹立っちゃった」


「アイツらにも事情があるんだろ? それに、俺だって一から十まで従う気はない。あれは俺たちアルデバランとホークアイ財団が手を組んだっていう会合だ」


「クス、そういう解釈なのね。まぁ確かに最後らへんはまいったって顔してたからね、クロト君」


「でも財団とか言うけど全体が見えないよね」


「まぁ手伝いしてたらそのうちあっちのほうからなんか言ってくるだろ」


「相変わらず大ざっぱ」


「ふふふ、でもやるときはやってくれるのがユウジ君よね」


「へへへ」


 夜風の中の散歩は終わり、3人はそれぞれ戻っていった。

 その後ユウジは休むことなく、パソコンと向かい合う。


 先日のエミの件を含めて、自分のファンやリスナーに対して今後のことを配信で伝えたいと思ったからだ。


「はい、どうもっす! 津川ユウジです!!」


 "始まった始まった!"


 "なにげに初じゃないこういう配信?"


 "おお、元気そうだ"


 "なにかな?"


「今日は皆にお伝えしたいことがあって。ほんのちょっぴりテンションは低めで配信してます」


 "え……?"


 "まぁ、今後の話だろうね"


 "テンションはさておきだけど"


 "なになに改まっちゃって?"


「まずエミの……いや、エミ・アンジェラのことです。もう先日の配信で知ってる人も多いけど、俺の同級生でした。仲良かったし、彼女の事情とかも知ってたから、すごくショックで今も心に重くのしかかっています。もっと自分が早くに動けなかったのかって、悔やむことばかりです」


 "あの件か……"


 "ユウジは悪くない"


 "ユウジは悪くないだろ常考"


 "どう考えてもアイツが悪い"


 "あの黒いキューブもわからずじまいだし"


 "自分を責めないで"


「……皆ありがとうございます。それで今後のことなんですが。えーっと」


 ”まさかやめるだなんていわないよね?”


 "え、嘘、待って"


「いや、やめないやめない! むしろ、これからも続けさせていただきたいと、ここに決意表明させていただきます!」


 "マジか!"


 "続行だぁぁぁああああああああああああ!!"


 "よかった。やめるって言われたらどうしようかと"


「俺はエミ・アンジェラと約束したことがあります。つらいことも楽しいことも全部含めてパーッと生きろって。この先色々迷ったりするかもしれないですけど、それも含めてド派手に突っ走っていきますんで、皆さんどうか、俺やアルデバランをよろしくお願いします!!」


 ペコリと頭を下げた直後、コメント欄が大いに盛り上がる。


 "ヴィリストン姫島:皆で一緒に頑張りましょうね♡"


 "キララ:あんまり無理しちゃダメだよ~"


 "ちょ!?"


 "きちゃあああああああああああ!!"


 "見てたんだ!"


 "湿っぽいのなんてらしくないぜ色男"


 "俺らはアルデバランについていく"


 "ヴィリストン姫島もキララもユウジを応援するってさ"


「……ちょ、ごめん」


 "お? 泣いてる?"


 "今は泣いていい"


 "ゆっくりやんなはれ"


 "またあのド派手な配信見せてくれ!!"


 こうして、大盛況の中決意表明の配信が終わった。

 部屋にひとり、ユウジはこらえた涙を全力で拭い去り、明日に向けて眠ることにする。


 ────夢の中で、エミが笑っていた気がした。

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