第39話 俺たちの新たな決意!
「世界という生態系? どういうことだ」
「……おっと、口が滑っちまった。ここはちょっと言えない。デリケートな部分なもんで。まぁ一応これだけは言っておきましょう。アカネのときに関しては実際アンタらアルデバランにも制裁加えようと思ったくらいですからね」
「おい、いきなりきな臭くなってきたぞ。制裁ってなんで俺たちが? 法律をやぶったからか? でもあれは!」
「そう、仕方がなかった。誰から見てもね。それにウチの上司の命令もあった。だからキララの取り巻きの記憶を改ざんするにとどめたんだ」
「あれってアンタらがやったの!?」
「おい俺じゃねえぞ!? そういうのはほかの部署の人間がやる。……ブラックボックスに関してはそう簡単な問題じゃない。アーティファクトをダンジョン外で使った件だって法律をやぶったからとかじゃない。むしろあんなクソみてぇなガバガバ法律破られんのは当然だからね」
「……色々と聞きたいことが山ほどあるけど、やはりこれは聞いておきたい」
「なんですかね? そろそろデザート頼みたいんですけど」
「なんで今になってコンタクトをとるだなんて言って近づいてきた? 目的はなんだ?」
「あー、それね。じゃ、それはデザート食い終わってから」
ユウジがにらむもクロトは平然とした視線を向ける。
見た目や雰囲気とは裏腹にとてつもない修羅場をくぐってきたようで、ある種威嚇のようにもとれた。
部屋に緊張の空気が染み渡っていくのを感じる。
数分後、チョコレートパフェに舌つづみをうったクロトはコーヒーをすすって口元をふく。
「図書館のとき、一応暗に近づくなって意志はしめしたつもりなんですけど、あのトンチキ陽介のせいで状況が変わっちまいました。もう、無関係じゃいられない」
「だったら記憶を改ざんとかしないの? アナタたちが今までやったように」
「それも視野にはいれてたけどやめた。今は人脈を広げないかって新しい試みをするつもりらしいです。そして白羽の矢が立ったのがアンタらってわけ」
「なにそれ、意味わかんない」
「上司の気持ちをわかれっていうのが無理難題だ。言わなくても察してよとかマジ無理。なんか考えがあるんだろう? なにしろ津川ユウジにご執心みたいだからねぇ」
「俺に?」
「理由はわかりません。でも言いぶりからして、アンタのこと知ってるみたいでしたよ。たぶん、ダイバーになる前からだ」
なんとも意味深な発言だ。
タチの悪いことに、その発言者である彼ですら真意がわかっていない。
「で、俺らが探してんのは複製ブラックボックスとオリジナルのブラックボックスを持っているであろう怪人なんですよ」
「もしかして、そいつが風背山市にいるっていいたいのか?」
「ここ数年、ブラックボックスの出現率が高くなってるだけじゃない。調査の結果、例の怪人が風背山市で何度も確認されてるんです」
スマホからその怪人の姿を映した画像を見せる。
「単刀直入に言います。このクソッタレを捕まえる手助けをしてほしいんですよ」
「え、なんでアタシたちがぁ!?」
「藤原エミの一件でわかったでしょ? こいつがブラックボックスをばらまいてるのは確かだ。手遅れになる前にとっちめないと、大勢の人間が犠牲になる。だがウチは人手不足だ」
「……俺は、やる」
「ユウジ君、本気なのね」
「でも、わかんないことだらけだし。コイツうさんくさいよ!」
「おい」
「エミみたいな犠牲者を出すわけにはいかない。ブラックボックスの回収だってまかせろ」
ユウジの瞳に迷いはなかった。
「もしさ、断ったらどうすんの?」
「ここまで聞いといてそんな選択肢とれることは期待しないほうがいい。ウチの諜報部とかがどう動くかなんてわかったもんじゃない」
「きったな」
「そういうもんだ。……ユウジさんはすると言ってるが、姫島さんやキララはどうします?」
「……私はユウジ君を手伝うつもりよ。風背山市に根付く家系の者としてそんな狼藉を許すわけにはいかないわ」
「え、姫島さん!?」
「お前は?」
「わかったわよ。もう」
釈然としないキララであったが、アルデバランの参加が決まった。




