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第29話 大型コラボ開始だ!

 今回のコラボは皆が衣装に気合を入れてきた。

 ヴィリストン姫島は以前着ていたチャイナドレスをまとい、キララにいたってはタンクボディスーツを基調とした腰マントつきの戦闘服。


 シスター・アルベリーは、魔力つきの特別な修道服を着ていた。


 そして例のセブンスター陽介だが……、


「ん~海外の女性ダイバーにも負けない美しさを持つ麗しのレディーたち。ん? おいおいおい、こんなところに一般ピーポーが来ているじゃないか。なんだい? このボクのサインかな?」


 キララに選んでもらった服を着ていったユウジにニヤニヤとしながら近づいてきた。

 かく言うセブンスター陽介のファッションの印象は、ひとことでいえば『ラッパーのなりそこない』だった。


 ダメージジーンズにドクロTシャツ、黒のコートと魔力付与のアクセサリーをジャラジャラ。


(なんかすっげーの来たな……この人がセブンスターか)


「どうしたんだい? このボクのオーラに惑わされてしまったかな? ハハハハハ」


「あ、いや、俺もダイバー。同じアルデバラン」


「アルデバラン……、あ、あー! 君かぁ。アルデバランのモブ」


「モブって」


「君のことは知ってるよ。まぁまぁやるそうじゃないか。ボクには、敵わないけどねー! ハッハー!」


「そっすか」


「それにしても君のコーデ……ちょっとダサすぎないかな? 今回はこのボクと麗しのレディーたちが織り成す伝説の1ページの幕開けだというのに。なんだよその貧乏くさい格好は。そんなのアメリカじゃありえないぜ。ハハハハハ!」


 まぁ言わせておくかとユウジは苦笑いをする中、先ほどからムスっとしていたキララがついに口を開く。


「悪かったね。貧乏くさいファッションなんか選んじゃって」


「へ? あの、キララ、ちゃん?」


「ユウジに頼まれたからそのファッション選んであげたの。申し訳ございませんでしたー貧相なファッションセンスで」


「あ、いや、違うんだよキララちゃん。これは……」


「……さ、D・アイとか準備しよーっと」


 くるっと背中を向けるキララにオロオロとするしかなかったセブンスター陽介。

 なにがどうなってんのかとユウジは小首をかしげていたら、姫島が耳打ちしてくれた。


「彼、キララのファンなのよ。一度なにかで共演して知り合った感じかな。噂じゃ何度もメッセ送ってるみたいよ。一度っきりの食事であとは全然ダメみたいだったけど」


「へ~、芸能界のなんやかんやってやつなのか」


「そっか、キララ嬉しかったのね。アナタがその服を着てくれて。それ、似合ってるわよ」


「へへへ、ありがとうございます」


「えーなになに! アンタあのキララちゃんに服選んでもらったの!?」


「ん? おう。ちょっとした衣装替えってやつでな」


「アンタお礼とか言ったの!? 粗品とか送ってさぁ!」


「えぇ!? お礼は言ったけど粗品っているの!?」


(ふふ、そそっかしいところもそっくり)


 ふたりの言い合いに表情をほころばせながら見守る姫島のそばで、シスター・アルベリーはジッとダンジョンのほうを注視していた。


 おぞましい気配を感じる。

 邪悪な気配には人一倍に鋭い彼女はこれまでその第六感めいた感覚と練り上げた技で危機を乗り越えてきた。


 万能でこそないが多数を助けるために使えるならばと思っていたが、ここまで肌がぴりつくのは初めてだった。


「皆様、そろそろ配信の時間となります」


「そうね。ユウジ君も準備しましょうか」


「うっす! 今日もよろしくっす!」


 なにも知らず、今日も元気いっぱいのユウジ。

 しかしそんな彼をひそかに睨みつけるセブンスター陽介。


 それぞれの思惑をはらんだ状態で、配信はスタートすることに。



 ────『白鯨の墓』。

 魔幻たる霧の向こう側に広がる高位のダンジョン。


 白銀の大地に点在する巨大なクジラの骨。

 そしてダンジョン特有の異質さをまき散らした仮初の空。


 あれらは沈没船であろうか。

 謎の重力場が働いているのか、残骸たちがユラユラと宙を漂っていた。


 まさに空に浮かぶ船の墓場だ。



 そんな光景をバックに6人で歩きながら会話を交えつつ、周囲に気を張る。

 魔物の姿は見られないようだが、油断はならない……はずなのだが、


「いいかい津川ユウジ。特別にボクが教えてあげるよ」


「は、はぁ」


「君の戦い方って強いだけだよね。そんなんじゃ情熱を大事にするイタリアじゃ通用しないぜ? もっとハートを込めなくちゃなぁ」


「ハートっすか。まぁ込めてる感じはしてるんですが」


「だぁかぁらぁ、アップデートしろって言ってんの。もっと海外のスターたちを見て勉強しなくちゃさ。ボクみたいに。ま、ボクは海外ダイバーの友人がたくさんいるからすぐに話が聞けるけどね」


「お、おぉ……」


(なにアイツ……)


 セブンスターはさっきからずっとユウジにつっかかっている。

 姫島は苦笑いし、キララはまたムスっとしていた。


「ふふふ、なんかあぁいう光景も懐かしいな」


「あら、なにか知ってるの?」


「いえ、ユウジは学生時代からああいう風に変な先輩にからまれたりするんですよ。別にいじめられてたってわけじゃないみたいですけど、……なんでしょうね。つっかかりやすいのかも」


 "むしろ俺らとしてはエミ・アンジェラと同級生だったってことに驚き"


 "知られざるユウジの過去"


 "気苦労もまた多そう"


 "俺だったら吐く"


 "それにしても皆の衣装めっちゃエロい"


 "↑ 今それ関係ねえだろw"


 "↑ 草"


 "↑ 通報"


 "辛辣で草"


 "お前ユウジをそんな風に見てたのか……"


 "↑ 待て笑うわww"


 "クッソwww"


 "俺の茶をかえせwww"


「アッハッハッ! 今日も欲望に忠実な諸君、コメントどうもありがとねー! でも、あたしたちの活躍にもっと期待してほしいな!」


 "もちろん!"


 "エミ・アンジェラの実力は私たちが知ってるよ"


 "私たちの憧れ"


 "ここまで大物ダイバーがそろってんなら楽勝でしょ"


「うふふ、みんなの期待に応えなくちゃね」


「少なくとも、ユウジには負けらんない!」


 それぞれが奮起する中、突如静かになったシスター・アルベリーは立ち止まる。

 そしてそこから右うしろの方向を見た。


「あれは……」


 彼女のD・アイがその方向を映した。


 ひときわ大きいクジラの骨の上。

 そこからこちらを見つめるように1匹の黒いひとつ目のドラゴンがいた。

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