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第23話 風背山学園でひと悶着!

 キララこと"朝倉里奈"の朝は早い。

 ランニングを終えてから、腕立て伏せ、腹筋、背筋50回を3セット。

 

 筋肉はつけすぎず、一定に保つ。

 ボディラインが崩れるのはもってのほか。


 かといって上位ダイバーとしての実力をおとしてはならないという極めて難しいバランスの中で日々の生活していた。


「ふぅ~、あっつ~。……6時30分、メニュー終了っと」


 脱衣場で衣服を脱ぎ捨て、生まれたままの姿をしたたる汗を洗い流した。

 シャワーを浴びたのち、身じたくを整える。

 食事にメイク、忘れ物がないかの最終点検。


「7時20分、通学。いよっし時間通り! なんか今日イイ感じ!」


 風背山学園。

 彼女が通う男女共学制の高校であり、ユウジの母校でもある。


「キララおはよー!」


「おはようね~!」


「キララー、昨日の配信みたよ! すっごくかっこよかった!」


「ふふふ、ありがと」


 アルデバラン結成から2週間ほど経ったか、キララの登録者数は3倍にまで膨らんでいた。


「キララー! チャンネル登録やっといたぜー!」


「サンキュー! もっと見ててね!」


「おーう見てるぜー!」


「お前の場合はスケベな理由だろ?」


「バッカ! うるせぇ!」


「アハハ、男子は相変わらずだねぇ」


 学園でもダイバーとしての名で呼ばれ慕われることが多い彼女だが、教室ではある種のひと波乱があるのだった。


「キララすごいよね~」


「最近乗りに乗ってんじゃん」


「やっぱ才能ってやつ?」


「それでグラビアとかやってんだからすごいよね~」


 ホームルーム前、彼女の席で和気あいあいと話すクラスメイトたち。

 それを遠目に睨み付ける女子生徒がひとり。


「あーうざって! 才能もお胸も豊かな女ってホントいるだけで風紀乱すよね~」


「アカネ……」


「グラビアアイドルもやってダイバーもやって学生もやったら大変じゃない? 学生なんてやめて、その身体で男ども満足させて生きてけば? キャハ!」


「ちょっとやめなよ!」


「キララ、あんなの聞かなくていい」


「うるさいなぁ。どうせアンタらもさ、その女の近くにいて自分もあわよくばチヤホヤされたいだけでしょ? 魂胆見え見え。ダッサ!」


 キララにやっかむアカネは憎しみに歪んだ顔を見せる。


「気持ち悪っ……男どももどうせソイツの胸とかが目当てでしょ? せんせーがっこうの風紀を乱すエロ女がいまーす」


 そうおどけてみせるも、アカネに対する視線は極めて冷たい。


「めんどくさ。行こ。ふたりとも」


「あ、うん……」


「……」


 とりまきふたりを引き連れて校舎裏へと行く。

 いつものサボりでお菓子やジュースをつまもうとしたのだが……。


「今、なんて?」


「いや、だからさ。私たちもう朝倉さんをからかうのとかやめたいんだ」


「正直、うんざり」


「なに言ってんの? あのエロ女に肩持つ気!?」


「アカネが大学生たちと遊びに行ってたときさ。私たち遊び半分でダンジョンへ行ったことがあるの」


「朝倉さんができて自分たちができないってことはないだろって思ってたの。でも、すぐに魔物に襲われて……そしたらさ、朝倉さんが身を挺して助けてくれた。あんなに嫌な思いさせてきたのに」


「だからね、私たちは朝倉さんを、ううん、これからはキララを応援する! もう、ああいうことはしたくない」


「はぁふざけんな!! それって裏切りだよ!?」


「もう、こういうのはこれっきり」


「じゃあね。アカネよりキララのほうが優しいし」


 とりまきにも見捨てられ、ひとり校舎裏で歯軋りをするアカネは怒りでどうにかなりそうだった。


 あの女さえいなければ自分が人気者だったのに。

 たとえ人気者でなくとも、きっとそれなりに愛されてはいたはずだと。


「奪いやがった……私の全部を奪いやがった……ッ! どれだけ私をコケにすれば、あのブスがぁああああああ!!!!」


 その後、ホームルームが始まるも担任教師の制止を無視して、アカネは家へと帰っていった。

 誰もいない自室のベッドで、キララを含む周りの人間への怒りがおさまらない。


「くそ、くそ、くそぉ! ふざけんな! ふざけんな! なんで私がこんな思いしなきゃいけないの!? 悪いのアイツなのに! アイツが調子に乗ってるからなのにぃ!」


 ベッドまわりのぬいぐるみを投げ散らす。

 イライラが最高潮に達しようとしたとき、あるものが目についた。


「なに、これ? 黒い、箱? なんでこんなものが……」


 手のひらサイズの黒いキューブがぬいぐるみの陰にあった。

 もちろんこんなもの知るはずもない。


 だが、《《心がそれを求めているのが感覚でわかる》》。


「すごく、綺麗……これがあれば、なんとかなる気がする。ふふふ、ふふふふ」


 アカネの憎悪に呼応するように、黒く滑らかな手触りがより彼女の視線を絡みつかせる。

 自分は使い方を知っている、そんな思いがわきたってきた。


 

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