お嬢様とパンピ
両片想いの人達って、端から見ると分かりやすいんですが、本人達はいっぱいいっぱいなところが、好きですね。
え? 大学のお友達に、どんなティーカップで紅茶を飲むか、聞いただけなのに。
「どんな? ってどういう事? 実家は来客用に2客しかないよ。あんたんちみたいに、紅茶専門店が出来るほど、持ってないよ。」
「我が家にはマグカップしか、無い。」
「そうそう、うちの実家も。ティーバッグを使う。」
ティーポットは、あまり使わない?
「うちは、ガラスの古いのがあるけど、これもお客さんが来た時限定で、使う。」
「おじいちゃんの家にあるから、行けば使うけど。」
「だから、マグカップにティーバッグだってば。」
「大体茶葉はNBストアまで行かないと。うちの近所のスーパーは置いて無いな〜。」
「それな〜」
「マジそれな〜」
じゃ、皆はどんなお茶を飲むの?
緑茶とか、ほうじ茶は?
「スティック。粉末タイプを、溶かして飲む」
「そうそう、カフェオレとかラテも」
「どんなっていうほど、お茶買わないよ。お客様用に、一応あるだけで」
急須に、湯呑みは?
「うち、無いよ。お祖母ちゃんちはあるけど。」
「うちもー。麦茶をペットボトルで、買う。」
麦茶は、夏作って、冷蔵庫に入れてくれるけど。
あ、コーヒーは?
「それも、スティック」
「うち、インスタント」
「うちも、普段はインスタントだなあ。あんたの家は? 」
パパが、豆買ってきて、毎朝挽いて淹れてる。
「うちの伯父さん、キャンプの時は、豆挽いて淹れてたけど、…普段はインスタントだよ。」
「はあ…。りなちゃんのお家は、凄いねえ。」
ええと…皆の家は、スプーンにどんな柄が入っているの?
「無地だよ。あんたのうちみたいに、百合とかバラとか、小さな水玉模様とか、入っていないから。」
そうなの? 小さい頃から、それしか使った事が無いから。
「あんたは、お嬢様だから」
違うよ。両親が結婚する時に、貰った物だってだけで、普通の家だと思うよ?
「普通の家には、グランドピアノは無い。ワンチャン、アップライト」
「白いコンサートグランドって…ピアニストかよ」
「「それな〜、マジそれな〜」」
おじいちゃんが生きている時に、買ってくれただけだよ?
それより、相談があるんだけど。
鈴木君って、彼女いるかな?
「りなが」
「鈴木君」
「やめときなよ」
「「「お見合いセッティングしてもらった方が、良い! 」」」
嫌なの。
このままじゃ、婚約者を無理やり決められちゃう。
私は、恋愛結婚したいの。
「うーん、考え方にもよるけど、環境が違い過ぎる相手との結婚は、大変だよ? 」
「そうだよ。お見合いも、合コンも、知り合いの紹介っていう意味では一緒だよ? 」
「親御さんに、何人かお知合い紹介してもらって、何回かデートしたら、見つかるんじゃない? 」
ええ!? ダメ元で、1度で良いから、恋人になって欲しいんだけどな。
一方、その頃。
りな達4人組がいる大学食堂の、通路を挟んで反対側に、男子学生4人組がいた。
はあ、りなちゃん、マジ可愛い。天使。
「お硬そう」
「ヤレなさそう」
「仮に付き合えたとしても、どこ連れてくの? 」
君ら、何て事言うんだよ!
良いんだよ。遠くから見つめていられるだけで。
はあ…、目の保養。
「鈴木は、古郡りなと付き合えたとして、将来どうしたいの? 」
「身分違いの恋に、酔ってるんだよ。見るからにお嬢様だよ? 」
「目ぇ、覚ませって。見た目可愛くても、性格最悪かも知れないじゃん? 」
そんな事無い。
教室の廊下で、お掃除のおばさんにお礼言ってたの、見たし。
ご飯の食べ方は、綺麗だし。
周りの友達も、良い娘だよ。
「あー、青木は確かにサバサバしてて、おもろかった。話したら、良い感じだった。」
「斉藤さんは、ゼミで一緒だけど、課題忘れた事無いし。グループ学習の時、皆の意見聞いてた。反対意見聞いて、目ウルウルしてたけど。」
「田中理央は、生脚がきれい」
「「あのさー」」
とにかく! 僕は、りなちゃんを遠くから見つめていられるだけで、幸せだから、良いんだよ。
「ヘタレ」
「ムッツリ」
「ストーカー」
やめて! ストーカーはしていない!
「でも、一歩間違えたらアウトだぞ? 」
「恋愛経験ゼロの変態」
「童貞か! 」
やめろ! 本当の事を言うな! 泣くぞ!
でも、もしできるなら。
1回で良い、会って話をしてみたいな。
お読み頂き、ありがとうございます。