後日談② 熱血・神の子、無双します!(後編)
※こちらは番外編です。
本編 第一部「カナリアイエローの下剋上」完結後の時系列となります。
ドドドドドドド…!
「!?」
なんて余韻に浸れない。
マニーが即座に、その場からジャンプをし、虹色蝶に紛れて再び姿をくらました!
ズザザザザザザザ!!
その地面へ、氷柱のように大きな棘が、斜め下方向へと無数に突き刺さった。
別の刺客が現れたのだ。と、そこへ、
「おまたせー♪ やっぱこの山にはまだまだ沢山の鉱石が… て、氷スライム?」
マリアが笑顔でかけつけてきた。
てゆうか、一体どこへ行ってたんだよ君!? また何か珍しそうな石ころ拾ってきて。
戻ってみるとその視線の先には、地面に氷柱を飛ばしてきたスライムが2体。
しかも、彼らはスッチャスッチャと跳ねて移動してくるたびに、触れた地面が凍って霜が出来ているのである。
その間、すぐサリイシュ達の元へと降り立ったマニーが、再び臨戦態勢に入った。
「北の凍土から流れてきたんだな。この山が落ち着いてきたから、縄張りが広がったのか」
「なるほどね。ここは私も相手するよ! この石達、預かっといて♪」
そういって、マリアが臨機応変にサリイシュへと石を渡した。
そして1人、マリアがスタスタとスライムの元へ走っていくと、
「どりゃあー!」
ドーン! バリバリバリ~!
再び氷柱攻撃をしようとした氷スライム達へ、豪快なジャンピングかかと落としと同時に、大きな落雷をお見舞いした。
鼓膜が破れそうな程の音を鳴らすそれは、スライム達の体を、真っ二つに勝ち割った。
「隙あり!」
続いてマニーが、真っ二つになって感電し、身動きが取れなくなっているスライム達へと、風圧を利用した重撃を食らわせた。
スライム達はその名に似つかわしくない、パリーンという音と共に、粉々に砕け散った。
氷スライムも、草スライム同様、木っ端微塵に散らばったのである。
ストッ
「二人とも、ケガはないか?」
マニーが着地し、近くの岩山へと身を伏せていたサリイシュを気にかけた。
「うん。大丈夫」
「なんとか」
先住民2人は無事だ。マリアとマニーは安堵した。が、
ズルズルズル~
「「…!!」」
サリイシュが、その「背後」の異変に気付く。
なんと、散り散りに倒れたはずのスライムの欠片たちが動き出し、どっかのサイバーネットSF映画の如く、どんどん1箇所へと寄り集まっていくではないか!
だが、その時。
「爆炎!!!」
ドカーン!
僕が急いでこっちへ走ってきて、そいつらに熱い衝撃波をお見舞いした。
地面に剣を突き刺す要領で、それはまるで隕石を落とすように、降りた場所から小さなクレーターを形成する。
それだけの熱風と衝撃を与え、スライムの破片たちを一瞬で蒸発させたのであった。
「はぁ… はぁ… 間に合ったぁ。みんなお待たせ」
――ヒーローは遅れてやってくる――。
僕はそれを何とか体現し、焔をフェードアウトさせたのであった。
急いで戻ってきたから、ちょっと息が荒くなってるけど、まぁいいだろう。
我ながら、少しは良い所を見せられたかな?
「お、おかえり… す、すごい。い、今の、すごく恰好よかったよね!?」
「え!? うん。あとの2人も、無事で何よりで。お、おかえりなさい!」
なんて、喜びと緊張、そして感動が交錯するサリイシュの反応。
それだけ、僕達の戦闘スケールのデカさに驚いたのだろう。
ここで、マニーがスライム達からドロップされたゼリーや枯草みたいなものを拾い、こう肩をすくめた。
「…そろそろ帰るか。これだけマモノ素材も多く残ったし、持ち帰って生薬を作るとするよ。敵であれ、彼らの命を無駄にはしない」
「だね~。珍しい鉱石もまた新たに見つかったし、アゲハもきっと喜ぶだろうなぁ♪ その石たち、預かってくれてありがとね~二人とも!」
と、マリアもマニーの後をついていくように、サリイシュから受け取った石を持ってウキウキの笑顔だ。
僕も最後の最後で、彼らにいい所を見せられたし、剣術の手腕が鈍っていない事も分かったので、今日はこれで満足である。
「いこうか。あっという間に夜だよ」
そういって、僕はサリイシュに鼻で帰路を誘った。
「「はい!」」
サリイシュは潤んだ笑顔で、僕たちとともに山脈を後にしていった。
ケガもなく、迫力のある戦闘シーンが見られたのだ。いい思い出になったに違いない。
――僕も。
――私も。
――いつか、勇者様たちと同じくらい、戦えるようになりたいな。
そんな若い男女2人の心の声が、微かに、聞こえてきたような気がした。
【クリスタルの魂を全解放まで、残り 18 個】




