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ep.1 神々が生んだ息子、芹名アキラ。

挿絵(By みてみん)

【夢の世界とアガーレール!】

 作 ハイカ






 ――ませ。


 遠くから、声が響く。

 

 ――だ… 覚ませ…


 聞き覚えのある声だ。

 そして、僕の視界は、段々と明るくなってきて…




 ――――――――――




 「起きるんだ。目を覚ませ」


 声が、鮮明になった。


 重い瞼を、ゆっくりと開く。

 光が、眩しい。


 けど、段々と鮮明になってきたそこは、光の反射もないような、とても暗い空間だった。

 側面には、無数の… モニターだろうか?

 そして、そんな僕の目の前には、


 「やっと目覚めたか。あ~長かったぁ」

 「もう、目覚めなかったらどうしようって、心配だったんだから」


 濃い灰色をベースに、チュール生地のアクセントが入ったブレザー姿の、若い男女。


 僕が目覚めた場所はなぜか、黒くて特殊な素材でできたベッド。


 男女2人に、向かいあって見下ろされる形で、僕は仰向けに寝かされていたのだ。


 僕はゆっくり上体を起こした。

 辺りを見渡してみる。部屋は黒く、壁があるのかないのか怪しい。


 「ねぇ。あなた、ここで目が覚める前に、どこで何をしていたか覚えてる? 名前は?」



 僕にそう聞いてくるってことは、あれからかなりの日数が経過しているのか。


 いや。その前に自分が何者なのか、ここで言わなきゃダメだ。


 きっと相手は、僕が長い眠りによって記憶喪失に陥っているのではないかと疑っている。

 もちろん、こうして冷静にいられるくらいには、僕の記憶は飛んでいないのだと信じたいけど… ぶっちゃけ今の状況も気になるが、まずは深呼吸をしてからだな。




 「セリナ――。芹名(セリナ)アキラ」




 それが、僕の名前だ。


 続けて、さらに細かいプロフィールの紹介もしていく。


 「1997年4月2日生まれ、東京都出身。本職は自営業で、在宅ワーカーの個人事業主なのと… あとは、夢の世界で皆に出会ったことかな。

 夢の世界での俺は、中高一貫に在籍する高校生で、虹色蝶の魔法というか、奇跡が使えていた。夢の世界での暮らしが終わるその瞬間まで、公民館を貸し切り、神様同士みんなでパーティーをしていた事は覚えている」


 僕はまるで本を読み上げる様に、目を瞑りながら、相手に伝えるべき要所要所を口にだした。

 そして目を開け、彼らの反応を待つ。


 「ふむ… その様子だと、長い眠りで記憶が飛んでるって事は、なさそうだな」

 「えぇ。ところで、私達のことは分かる?」


 彼らは更にそう訊いてきたので、僕は「うん」と頷いた。


 「イングリッドと、ミネルヴァ。通称『ひまわり組』。2021年度の、神の跡取りゲームにおいて選抜された、新しい神様2人。日向英才(ひでとし)と、葵井(さやか)


 僕はそう答えた。

 この男女の事は、夢の世界とやらで何度も会ったから、覚えている。

 「「!!」」

 二人の肩が、一瞬だけピクリと上がった。出てきた返事は、

 「なんだよ。まさか、本名まで言い当てるとは思わなかったぞ」

 「でも良かった。私達の事もちゃんと覚えているみたいで」

 だった。安堵したところは共通か。

 でも、これで僕自身も陰で安堵したのは事実だ。だって、自分の頭のネジがこれで吹っ飛んでいないという事が、彼らの証言で分かったから。


 でも、その前に気になる事がある――。ここは一体、どこだろう?


 そんな僕を前に、イングリッドの口から、こんな経緯が。


 「起きたらこんな殺風景な所で、驚くのも無理はない。ここは上界にある、天国と地獄の狭間。つまり『あの世』の一端だ。もちろんお前は生きている。地獄に行っていないからな」


 「ん? えーと」


 「セリナ、落ち着いてよく聞くんだ。神の跡取りゲームが終わり、俺達の魂が夢と現実の二世界で分離した“あの日”から―― お前は、地球時間の基準で3年も眠っていたんだよ」


 「え… 3年!?」


 「それともう1つ、残念な知らせがある。俺たちが一同を介し、寝ている間の『夢』として過ごしていたあの夢の世界は、消滅した可能性が高い。探しても見つからないんだ」


 「うそ」


 次から次へと、衝撃的な事実を告げられた。

 僕はそれが、どれほどショッキングな出来事なのか想像できる。手が、僅かに震えだした。

 「他のみんなは? どうして、世界が消滅なんてしたの!? 皆の元きた世界は!!?」

 僕は、自分がここにいる理由よりも先に、他の皆の安否が心配になった。


 「それらも消えたかどうかさえ分からない。夢の世界が突然散って、俺たちが半ば強制的に上界へ飛ばされた時に、こうして体が見つかったのがセリナ。お前1人だけだったんだよ」


 「そんな」


 「ねぇイングリッド。その言い方だと、まるで皆死んでしまったみたいじゃない。やっとそれらしき(・・・・・)波長を捉え、出所である惑星も特定できたのだから、まだ希望が残ってるはずよ」


 ミネルヴァが、顎をしゃくりながらそういう。

 今の言葉は、この絶望的な状況の中で差す、一筋の小さな“光”のように感じられた。


 「波長って? 惑星って?」

 僕がそれらを反芻(はんすう)すると、ミネルヴァがここで、部屋の一角にあるモニターの1画面を指さした。


 それは、地球―― によく似た、水、雲、そして緑の大地に覆われた岩石惑星だった。


(つづく)

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