54 若い二人
体調が優れないのでしばらくこのくらいの長さです
着いた旅館は近くの山をほぼ全部使ったものになっていた。
一棟一棟が独立しており、それぞれに露天風呂もついている始末だ。あまりたくさんこういうところに泊まる機会があるわけではないので、とても貴重な体験だ。
哲也さんが全て予約などしたので栞とロビーのソファで雑談しながら待っていると着物をきた若い女将がでてきた。
普通、こういうところにいるのはやや年配のベテランのイメージがあるがここは比較的最近オープンしたばかりらしく、ターゲットとしている年齢層も比較的低いので若い人が多いと後から聞いたときには納得した。
「恋人さんですか?ようこそお越しくださいました。」
と話し掛けてきた。初めて会ったはずなのになんともいえない安心感をもたらす話し方で、とても話しやすい雰囲気を作りながら声を掛けてきた。
残念ながらまだ付き合うことはできていないので正直に「いいえ、恋仲じゃないですよ。」と答えておく。
女将さんは少し残念な表情をし、さっきからずっと黙っていた栞を見ると顔を朱く染めていた。しかし、見られていることに気がつくとすぐにいつもの表情にもどり、拗ねてしまった。
「私のことはお遊びだったんですね……」
といかにも俺が浮気したかのような発言をしだした。そもそもそんなふうに言われる関係になった覚えはないし、特に栞意外の女子……または女性と関わるなどほぼないだろう。
「それはいろいろと誤解を生むからやめてくれっ!」
と必至に叫んでいるとちょうどチェックアウトを終えた哲也さんが手招きをしてきた。それぞれの棟はある程度離れているので、たどり着くにはある程度歩かなければならない。しかし、今回取ったところは案の定最高級なようで、リアカーによる送迎をしてくれた。3分位するとあるやや大きな木の家の前に止まった。
「ここですね。」
リアカーを運転していた人がそう言い、栞とともに降りたが何故か哲也さんは降りなかった。
直後、哲也さんの表情は怪しげな笑みに変わった。
「若い二人は満喫してこいよ。ただ、明日もあるからあまり遅くまでヤるなよー。」
とおせっかいなことを言って森の中に消えていった。どうやら哲也さんとは別に部屋を取っていたようだった。
さあ、気まずい。
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