45 厄介な店員
今日もまあまあ長めです
「「あ……」」
エレベーターだ開いた瞬間、中から出てきたのは山岡とその秘書だった。
奏人の僅かな驚きを含んだ言葉に反応したのは哲也だった。すぐにお互い目が合い、哲也はすぐに立ち上がってお辞儀をした。もちろん山岡もだ。
「あちゃぁ……いつもいつもタイミングの悪いときに限って山岡は……」と思いつつも誰にも聞こえないほどの小さなため息をついた。
いつも変なタイミングで出会ってしまう。ここは金持ちのたまり場にでもなっているのだろうか……哲也と静かにお辞儀した後、山岡がこっちに向かってきた。この前のこともあるのでどうしても身構えてしまう。
とはいもう満足してあのようなことはしてこないだろう。と思っていたのに……
「彼女が前話してくれたお嫁さんか……まだ高校生なのに可愛いお嫁さんを見つけたんですね。流石っ!」
またやられた。山岡に。
俺は哲也さんと会ってから、一度も栞を「彼女」だなんて紹介していない。
いくら哲也さんとはいえ流石に二人のこのなんとも言えない関係を明かすのは躊躇した。だから、二人で一芝居打つことにしたのだ。
今日、哲也さんと話し合っていたのは、栞の兄の家についてである。栞は高校に入ってから仲良くしてもらっている仲であり、彼女の兄にも日々お世話になっている。そんな彼女の兄が結婚するらしく、栞さんのお父さんが奏人と栞にも協力してもらい、家をプレゼントする。という話になっていた。
そんな設定を知っているのは奏人、栞、祐作くらいしかいないものなので、今たまたま居合わせた山岡が知るはずもない。
そんな山岡がまたもや爆弾を投下した。
「なんかみたことあると思ったら鷹司のお嬢さんか。奇遇なものだねぇ」
「!?」
さすがの山岡であってもほとんど社交界に出ていない栞のことは知らない。もしくは見たことがないと思っていた。なので、特に隠そうとするほうがまずいと思った。しかし、流石の情報量だった。さて、隠し事がすべてバレてしまった。
山岡は今回ばかりは悪気がなかったようで、「やっちゃった?」といった表情をしていた。哲也さんの方をみると、じっとこちらを見つめていた。
「あはは……えっと、お手洗いに行ってきます。」
逃げることにした。
「はぁ……どうしようか。」
俺はトイレに篭って頭を抱えていた。最近はやたらと秘密がバレる。
俺の場合、話のスケールが少しばかり大きかったりするので、あまり人を巻き込みたくはなかった。ただ、ここまで来てしまうとどうしようもない。
哲也さんにも巻き込まれてもらうしかないか。と覚悟を決めて、トイレを出た。
不便なことにこのレストランにはトイレが一つしかない。前回、今回と来た席は25階にあたり、3〜25階がレストランとなっている。あまりにも不便だったので、前回担当者に聞いてみたところ、トイレの臭いや音で少しでも気分を損ねたくない。という店の意図のようだった。そのため、トイレは3階にしかないのだ。
トイレから出て自分の席に戻ろうとエレベーターに乗ろうとすると、不意に後ろから肩を叩かれた。
振り向くと、そこには若い少しちゃらけた感じの店員だった。特に顔を見たこともない人だったのでなんの用事だろうかと身構えると、彼は嫌味を言うような顔で口を開いた。
「この店はガキが来るところじゃねぇんだよ。帰れ。」
正直なところムッとした。店員でありながらも客である可能性など考えずに喧嘩越しに話しかけてくるとは奏人としても予想外だった。
「あの、私は最上階で食事中でトイレから帰るだけですが?」
正直なところ、なんとなく引き止めて確認したくなるのもわからなくはないものの、言い方というものがあるだろう。あいにく25階は相当上だし、スマホも上に荷物と一緒に置いてきてしまった。
「んなわけねぇだろ。お前みたいな奴はファミレスでも食っとけ。」
奏人としては相手も十分納得できるような理由は話したし、もう大丈夫だと思っていた。しかし、ここまで話が通じない相手だとは思わなかった。
「しつこいですね。他の店員を呼んでください。私の顔を覚えているものも一人や二人はいると思いますから。」
この男では埒が明かないと思い話の通じる店員がいてほしかった。前回も今回も最上階で食事をしているので、覚えているものもいくらかいてもおかしくはないだろう。しかし、
「俺が店員だ。俺の言うことが聞けないなら帰れ。他の店員をだせ?舐めるなよガキ。」
逆に過激化させてしまったようだ。
人を見た目で判断するのは良くないですねぇ⇑⇑⇑




