42 家の予算……国家予算?
遅れましたー
奏人が哲也の元を離れたのは意外とつい最近なことである。
中学校までは義務教育なのでなにかと制限が多いため、哲也には保護者になってもらう必要があった。それにかかる費用は自分で払いたいと伝えたものの、まだまだ中学生なんだからそんなことは気にするなと言われてしまい払ってもらっていた。今、高校生になったので返すか?と言われるとそうではない。
今の哲也にとって中学校の養育費など気に留めるほどの額ではない。「返すも返さないも同じ。」といえるほどのお金持ちなのだ。
しかし、奏人は一応お礼はしている。年に数回お歳暮を含めた贈り物は欠かしていないのである。それで送るものは普通のお歳暮とは違い、お互いが相手に合ってそう。または、相手に使ってほしいものを選んで送りあっている。そのため、時にはダンボールには入りきらないものが届くこともある、仲良しな親子のような関係なのだ。
「まずは中入りな?昨日の電話で大体はわかってるから。用意はできてるよ。」
そういって哲也さんは部屋の中に手招きした。彼の家はもちろん豪華なのだが、意外と倹約家である。
案内された部屋は白を基調としたシンプルな作りをしているものの、並んでいる家具やテーブルなどは知る人が見ると腰を抜かしてしまうようなものばかりだ。
そんなものを置いているのにも関わらず、緊張感というか圧迫感というかを感じさせないのは流石といったところだろう。
「うわぁ、きれいな部屋……」
栞の家には何度かお邪魔したが、彼女の家とは違った豪華さにびっくりしているようだった。
鷹司家の豪華さは人を飽きさせず魅了するもの。対して岬家の豪華さは落ち着きを求め、分かる人にしかわからない静かな豪華さを持っている。それぞれ真反対というわけではないものの、全く違った豪華さである。
「それで……家の件だけど、いくつか場所は見繕っておいたよ。ざっと10ヶ所かな。」
「おお、10ヶ所も。ありがとうございます哲也さん。」
栞の頭には無数のはてなが浮かんでいた。まあ、今日はどういう用事かを全く伝えていなかったので無理はないだろう。
「家?どういうこと?」と俺と哲也さんの顔を交互に見ながら呟いているのがまた可愛い。
「おや?奏人から聞いていなかったのかい?」
哲也さんが少し驚いた顔で聞いた。それと同時にこっちに視線を向け、「意地悪し過ぎちゃだめよ。」というような視線が送られてきた。幸い怒っているというより微笑ましく思ってくれているような目だったので特に心配はないだろう。結果的に可愛い反応が見れた訳だし。
「はい。初めて聞きました。さては奏人くん。わざと隠してましたね?」
正直なところ、栞は隠されていたことについてあまり触れてこないと思っていた。しかし、栞は奏人の予想に反して一発で痛いところを突いてきた。しかし、奏人はそこまでは万が一のことで考えていた。
「実は敢えて言わないほうがワクワクするかなと思ってて隠してたんだ。」
奏人がそう言うと栞は納得したような表情をしていた。が、哲也さんはしきりにこちらを見ながらニヤニヤしていた。
バレるじゃないか。
栞には昨日の時点で欲しいものやほしい家具などを考えてもらっていたので、内装に関してはほぼ決まっていた。
しかし、問題は土地と予算だ。土地は、住む上で一番大切といっても過言ではないほど重要になってくる。なので午後からは2人でいくつか回るつもりである。そのためまずは予算だ。
こんかいばかりは栞にもいくらか正体がバレてしまうかもしれない。しかし、これから一ヶ月一緒に住む上でいくつもの不便があるだろう。幸いお金には困っていない。いずれかはずっと一緒に居たいと思っている相手なのだ。いつかはバレてしまうのなら、今バレてしまってでも一緒に今を楽しみたい。そう思ったのだ。
「予算は、1兆までなら構わない。最高の家をお願いします、哲也さん。」
これが奏人にとっての覚悟のセリフである。
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