30 怒り
昼が近づいた頃、奏人と栞は大型のショッピングモールにいた。
俺の紹介する店はとんでもないことになりそうだと思った栞が近くにあるショッピングモールに行くこと
を提案したのだ。
俺としてはまだまだ紹介したい店があったし、特にが仕方がない。と少し落ち込みつつもウインドショッピングを楽しんでいた。ファッションには疎い人間からしてもわかるほど栞にはほとんどの服が似合っており、見ている方も楽しいのだ。
彼女いわく「午後は奏人くんの番。」とのことだが、正直いってずっとこのまま栞を見てる方がいいかもな。と考えていた。デートは順調……なはずだった。
奏人がお手洗いに行っている間、栞には外で待っていてもらったのが、いかにもチャラそうな男たちに囲まれている。栞は手を乱暴に掴まれ、抵抗しているものの男たちは一向に引こうとしない。
実際奏人がそばにいられなかったことが悪いのだが……手を無理やり掴みながらだ流石に見逃せないという気持ちで動きたかった。しかしそんな感情よりも先に、「取られたくない」などと思ってしまった。
まだ付き合っているわけではないのにどうしても失いたくないと思った。だからこそ、
「俺の彼女に手出すな。」
「!?」
考えるよりも先に。自分でもびっくりするくらいドスの利いた低い声が出た。
通常の奏人でさえ、大物に汗をかかせるほどだ。それよりも圧倒的に違った。いくらヤンキーのような格好をしていたとしても初戦は一般人だ。彼らの足元には……水溜りができていた。
「手を無理やり引っ張ってたよな?」
そう言いつつも栞の方に目を向ける。彼女はとても怯えているようだった。それもそうだろう。いきなり力の強い男数人から手を掴まれ、執拗にナンパされたのだから。
そんな彼女をどうにか安心させようと優しく胸に抱き寄せる。胸の中で彼女が静かに泣き始めてしまったのがわかり、少し焦りながらも男たちに言う。
「謝罪の一言もないのか?なんなら被害届を出すぞ?」
「「「……」」」
彼らははみな奏人の圧に耐えきれず、失禁していた。そんな尊厳もない男たちは声すら出せず、無言の時間が少し立つと一人の大柄なヤンキーが間に入ってきた。
「おめえら、なにこんな陰キャ相手にこんなことになってんだよ」
「「「パクパク……」」」
下っ端達はまだ声が出せないのか、口をパクパクしている。
「なあ陰キャくん。さっき被害届がなんとかって言ってたけど、ほんとにそんなことしていいのかなぁ?」
ヤンキーのトップらしき人物はそう言っているが俺は全く何も感じない。「こいつらには威圧感がない。ただのヤンキーのマネごとだ。」なんて思っていた。
「陰キャくんお金欲しいでしょ?黙ってるって言うなら君の貯金額を倍にしてあげるよ。俺の家は市議会議員の家だ。逆らったら…わかるな?」
「黙ってたら貯金倍にしてくれるんだよね?じゃあこれ」
そういってスマホに自分の口座の残高を表示させた。この頃は通帳を持ち歩かなくてもよいから便利なのだ。さて、残高を見たヤンキーごっこくんの反応は……
「……うそ……だろ?」
予想通りの反応だった。なんせ彼に見せたのは、『経済の神』ーーいわゆる仕事用の口座だ。最近は出資続きとはいい、彼を驚かせるには十分だろう。
「一、十、百、千、万、十万、百万、一千万、一億、十億、百億、一千億、一兆、十兆、百兆……どうなってんだよ、これ。おかしいだろ、こんなの。ははっ」
彼はもう二度と見ることのないような残高を見て、笑うしかなかったようだ。
「失礼なことを言ってすみません。なんでもします。どうか、どうか命だけは」
なんで命取ることなっているんだか……それにしてもこいつは、何もわかっちゃいない。
「なぜお前が俺に謝る?俺ではないだろう?それに、一番悪いのは誰だ?よく考えてから発言しろ。」
正直言って生まれてから一番腹が立った。この男たちをどうしても許したくなかった。でも、胸の中で静かに泣いている栞を見るとそうしてはいけないと思う。彼女の力に、支えになれるように、ここは堪えねば。と思った。
自分になぜこんなにも才能があるのか。考えても考えても意味なんてわからず、利用される未来しかみえない。いや、見えなかった。
「「「本当に申し訳ありませんでした。」」」
「お前らこれから一ヶ月、毎日ここの清掃な。」
「え……それだけで……」
こいつらなんかもうどうでもいいのだ。俺は……全力で栞を守り、支えるためにこの力を使う!
「さあ、いこうか、栞。」
「あのぉ奏人くん。すっごくいい雰囲気なのはわかってるんだけど……私にも残高見せてくれない?」
早速ピンチ到来っ




