30 謎の爺さんの暴走
この店の店主は少し変わっている。彼はほとんど店番をしておらず、ほとんど本を読んで過ごしている。それなのにも関わらず、一度も強盗などが入ったり、部外者が入ってきた。などの話は聞いたことがない。この店は誰もがうなるほど完璧なのだ。
「爺さん。いるか?」
俺はぶっきらぼうに。そして本当の家族のように呼ぶ。出てきたのは白い髭を生やしたお爺さん……と呼ぶにふさわしい人だ。歳はいつくなのかわからないものの、腰を抱えて出てきたあたり、相当な歳だろうと思われる。しかし、彼からの視線や圧は老人とは思えないくらいのものが発せられている。そんな彼を前に栞は大丈夫なんだろうか……
「やあ、奏人か。そちらのお嬢さんもいらっしゃい。彼女さんかな?」
「い、いえ彼女だなんて//」
「……」
いくら可愛い女の子を連れてきたからと言ってもいつも面倒くさそうに対応するあの。あのお爺さんがこれとは……美女おそるべし。
・・・・・
「爺さん。彼女に合ういいものを探してるんだが。あるかい?」
爺さんが対応を変えてきたのを逆手に取り、彼女にあうものを求めてみた。
これは戦争なのだ。とても、とても醜くちっぽけな。
「とっておきのいいものがある。この機会じゃし、お前の彼女ならきっと大切にしてくれるだろう。少し待っとってくれ。」
よかった。と内心ホッとしていた。爺さんのことだから「意地悪をするやつにはやらん!」なんて言ってくると思っていたが心配いらなかったようだ。
「奏人くん……知り合いなの?」
「ああ、そうだよ。長いことお世話になっているお店なんだよ。だからお金の心配はいらないってわけ。」
栞は爺さんが消えていったところと俺を何度も見て、動揺が隠せないようだった。
「ならよかったよ。そんなにお金を払えるほど私はお金持ってないから……」
そんなこんな話していると奥から爺さんが戻ってきた。手には何やら頑丈そうな箱を抱え、先程よりもいくらか楽しそうな雰囲気だ。
「これは誰に売ろうかと考えて考えて取っておいたんじゃがまさか奏人に売ることになるとはのぉ」
そう言って彼が箱から取り出したのはいかにも高そうな宝石が目立たない程度に飾られたブレスレットだった。
「あの……爺さん。俺たち服見に来たんだけど。」
「あ、そうじゃったんか。まあよい。結婚式には行けんから早めの結婚祝いじゃよ。」
「「え?」」
「わしから出せるのはこれくらいじゃ。いや、これもやるかのぉ」
そういって爺さんはカウンターのしたから謎の紙袋を取り出した。中身は見えないようにしっかりと包まれている。
「代金は…4000くらいかのぉ」
彼の提示してきた額は思っていたよりも安かった。そうして俺たちは店を後にした。
「いい買い物ができたけど……このネックレスどうしよ。」
栞は心底困ったような表情で訴えてきた。まあ、見知らぬ店に案内されて変な爺さんからあまりに高価なものを渡されたら誰だって困るだろう。タダということもあって偽物と思うかも知れないがあの爺さんに限ってそんなことはありえない。だからこそ俺はこう言う。
「特大の勘違いされたけど、俺からのプレゼントだと思って大切にしてほしい。」
あの爺さん……ほんとに結婚祝いのつもりか?あのネックレス……数十億は下らんぞ……
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