光溢れる日に
本日3話目の投稿です。本話で完結となります。
8/20に月間総合ランキング1位になっていました!
また8/18夜の日間総合ランキング1位、8/19と8/24の週間総合ランキング1位でした。皆様本当にありがとうございますm(_ _)m
9/30に久し振りに見たら四半期総合ランキング1位になっていて驚きました。皆様のお蔭です。
また、誤字報告をありがとうございます、修正しております。
「わあっ! エディスお義姉様、まるでお姫様みたいですね」
ぱあっと顔を輝かせたアーチェが、純白のウェディングドレスを身に纏ったエディスの元へと嬉しそうに駆けて来た。
窓から差す陽光を浴びて、目が冴えるほどに白く輝くシルク地のドレスは、ライオネルが王都でも一番と言われる仕立屋に特別に注文したもので、色白で華奢なエディスの可憐な美しさを引き立てていた。エディスが歩みを進める度、繊細な裾のレースがふわりと揺れる。エディスの左手薬指には、ライオネルに贈られたダイヤの指輪が美しく輝いていた。
エディスは、頬を紅潮させてエディスを見上げているアーチェの、艶々とした黒髪を優しく撫でた。
「ふふ、アーチェ様、ありがとうございます。アーチェ様こそ、とっても可愛いですよ。その薄桃色のドレスも、よくお似合いですね」
アーチェは、にっこりと嬉しそうに笑うと、後ろを振り返った。
「あ! クレイグお兄様と、ユージェニー様もいらっしゃいましたよ」
アーチェが手を振った先では、大きな笑みを浮かべたクレイグと、感動に瞳を潤ませたユージェニーが、仲良く腕を取り合っていた。
「エディス、とても綺麗だよ。……今日のこの日を迎えられたのも、君が兄さんを支えてくれたからこそだよ。これからも、兄さんのことをよろしくね」
「ありがとうございます、クレイグ様。私の方こそ、ライオネル様のお蔭でこの幸せな日を迎えられたこと、感謝しておりますわ」
クレイグと微笑みを交わしたエディスの手を、大きな瞳いっぱいに涙を溜めたユージェニーがぎゅっと握った。
「エディス様! なんてお美しいのでしょう。ライオネル様もお元気になられて、とうとうお二人が一緒になられるなんて……。エディス様のお力と、深い愛情のなせる技ですわね。本当におめでとうございます」
「ユージェニー様。いつも私の貴族教育にもお力添えくださって、ありがとうございます。これからも、良き友人として、そして将来の家族としても、よろしくお願いします」
温かな笑みを浮かべたエディスの言葉に、嬉しそうに、ユージェニーはクレイグを見上げてはにかんだ笑みを浮かべた。三人の様子を、アーチェもにこにことして見上げていた。
アーチェは、後ろから現れた人影に気付くと、一際大きな笑みを浮かべた。
「ライオネルお兄様!!」
ライオネルに駆け寄って抱き着いたアーチェを、ライオネルも柔らかく抱き締め返した。そして、エディスに視線を移すと、彼女を見つめて眩しそうに目を細めた。
「エディス。……ああ、君は天使のようだね。信じられないくらいに綺麗だよ」
「ライオネル様こそ、本当に素敵ですわ……!」
ミッドナイトブルーのタキシードに身を包んだライオネルは、溜息が出るほど美しかった。間近で見るタキシード姿のライオネルのあまりに美麗な姿に、エディスがほうっと息を飲んで見惚れていると、ライオネルが楽しげにくすりと笑い、彼女の手を取って軽く口付けた。
「エディス、今日は少し緊張しているのかな?」
「ええ、少しだけ。でも、アーチェ様とクレイグ様、そしてユージェニー様と話していたら、緊張も解れてきましたわ」
クレイグとユージェニーが、揃ってライオネルに笑顔を向けた。
「兄さん! 結婚おめでとう」
「ご結婚おめでとうございます、ライオネル様」
「ありがとう、クレイグ、ユージェニー。……次は、君たちの番だね」
嬉しそうに朗らかな笑みを交わす面々を見て、エディスは胸に込み上げるものがあった。以前はどこかぎこちなく冷えていた関係が、温かく溶けたように感じられたからだった。
(ああ、ようやく、こうして皆が心から笑い合えるようになったのね。よかった……)
少し離れた場所からその様子を見ていたグランヴェル侯爵は、感極まった様子で瞳に浮かんだ涙を拭ってから、ライオネルとエディスの元に歩み寄って声を掛けた。
「今日はおめでとう、ライオネル、エディス。……ライオネル、君が健康を取り戻して、このような晴れの日を迎えることができるなんて、私は……言葉にならないほど嬉しくてね」
少し言葉を詰まらせてから、グランヴェル侯爵はエディスに感謝を込めた笑みを浮かべた。
「エディス、あなたはライオネルが最も辛い時に支え、そしてこのグランヴェル侯爵家に光をもたらしてくれた。何てお礼を言ってよいか、わからないよ。本当にありがとう」
「私こそ、グランヴェル侯爵家に温かく迎え入れてくださって、ありがたく思っておりますわ。それに、ライオネル様のような素晴らしい方と出会えたことは、私の人生で一番の幸運です」
ライオネルはエディスと微笑みを交わしてから、父を見つめた。
「父上。今まで、たくさんご心配をお掛けしました。それでも僕のことを変わらず信じていてくださって、ありがとうございます」
「当然だろう、大切な息子なのだからな。……さあ、皆、君たちのことを待っているよ」
父の言葉に頷くと、ライオネルは優しくエディスの腕を取りながら、窓の外に広がる澄んだ青空を見上げた。
「エディス、では行こうか。……君のご両親も、空の上から君を見守ってくれているのだろうね」
「はい。私もそんな気がしています、ライオネル様。それに、きっと、ライオネル様のお母様も」
「ああ、そうだね」
眩しい程の晴天に、エディスには、天から祝福してくれている両親の笑顔が目に浮かぶようだった。
青空に視線を向けて、感慨深げに瞳を細めたエディスの耳元で、ライオネルが囁いた。
「必ず君を幸せにするよ。僕の愛しいエディス」
ライオネルは、輝くばかりの美しい笑みを零すと、エディスの額にそっと唇を落とした。
ふわりと頬を染めたエディスは、顔いっぱいの笑みを浮かべてライオネルを見上げると、彼と腕を取り合って、希望に満ちた未来へと足を踏み出して行った。
最後までお付き合いくださり、どうもありがとうございました!少しでも楽しんでいただけたようでしたら幸いです。できれば評価やブックマークで応援していただけましたら、とても嬉しく思います。
読んでくださった皆様の温かなお心遣いに支えられて書き上げられた作品です。優しいお言葉をくださった皆様に感謝しております。感想もすべてありがたく拝見しています。また幸せな後日談なども書けたらいいなと思っています。
また、別の作品になりますが、「婚約破棄され家を追われた少女の手を取り、天才魔術師は優雅に跪く」1巻・2巻、コミカライズ版「義妹に婚約者を奪われた落ちこぼれ令嬢は、天才魔術師に溺愛される」(オザイ先生)1巻(2巻今秋発売予定)も発売中です。こちらも、心優しいヒロインが周囲を幸せにしながら、自分も幸せになっていくお話です。よかったら、こちらもお手に取っていただけましたら、大変嬉しく思います。どうぞよろしくお願いいたします。




